まずはパスカルをディスる
國分功一郎は第一章でまず、フランスの哲学者であるブレーズ・パスカルの人格をボコす。パスカルは「人間は考える葦である」という有名な一節のせいで、心温かい人物というイメージがついているが、実際には強烈な皮肉屋であったという。パスカルは退屈について、「部屋でじっとしてればいいのに、それすら耐えられない愚かな人間どもが! バーカ!」みたいことを言っている。なるほど、すごく感じが悪い。
パスカルは続けてこう言う。
「部屋でじっとしていられないからお前らは山にウサギを狩りに行ったりするだろ? 本当はウサギなんか欲しくもないくせに。そしたら、『本当は、ウサギなんか欲しくないんだ』とか訳知り顔で指摘しはじめる、自分のこと賢いと思ってるヤツとか出てくるじゃん。オレ的には、そういうのが一番ダメ。そういうヤツがマジで一番おろか」
パスカル、ほんと感じ悪いな! 著者も本書の中で突っ込んでいる。「いったいどうしろと言うのか?」と。その通りだよ!
國分功一郎はパスカルのこうした歪んだ人格を紹介した後、「人間は退屈になると苦しみを求める性質がある」とまとめている。ここから、ニーチェやラッセル、ハイデガーの思想を解説しつつ、人間というものの姿をあぶり出してゆく。人間は楽しいことなど求めていない、幸福になりたいわけではない、興奮できれば辛くてもいいのだ、と、刺激的な内容が続く。第一章を読了したときには、「一緒に幸せになろうねって言ったじゃない!」と詰め寄られたとしても、毅然とした態度で「苦しいのが好きなんだ」と答えることができる人間になっているはずだ。