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引っ越します、って言えなくて【連載】松尾英里子のウラオモテ

松尾英里子 松尾英里子


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そしてもう一つ、モヤモヤの原因がある。それは、引っ越すことを、いつ、どのタイミングで伝えるかだ。先生には、事務手続きの問題もあるので、3学期の始業式の日に伝えた。「ショック・・・寂しいです」とぽろぽろこぼれる涙を見て、私ももらい泣きしてしまった。うう。

さあ、あとは、友達やママたちにいつ伝えるか。なぜそんなに悩むかというと、3学期が終わるその日まで、いつものまま接してほしい、という願いがあるからだ。

幼児の成長は、私が以前思っていたよりずっと著しかった。先月できなかったことが、今月は難なくできるようになっていたりするのはよくあること。年少と年中、年長では顔つきすら全く違っていて、日常の身支度、言葉遣い、友達とのかかわり方、注意の及ぶ範囲など、ぐんぐん成長していく。そうなると親たちもおのずと近い将来の話をする。「来年の運動会では跳び箱とべそうだね」「来年の芋ほりは、先生の助けなく、一人で掘れそうだね」

もし、引っ越しを告げたらどうだろう。いつも通りに接してくれるだろうか。来年度の園でのイベントの話や、楽しい将来の話をしにくくなるのではないか。すでに来年度のクラス編成がどうなるか話題になっている中、「実はうち、来年はいないんだよね・・・」と言い出しにくいのも事実。かといっていつまでも黙っているのも水臭い。どうしたものか。モヤモヤは増大するばかりで、「引っ越します」の一言はまだ腹の内だ。

いざ引っ越しを決めてみて、子どもを通して広がった人間関係の深さと温かさを改めて感じる。たった一年ではあったけれど、この幼稚園で得られた出会いに心から感謝している。あと2か月。親も子も、いつもの幼稚園をいつも通り楽しみたい。

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