ハゲでもモテる、ハリウッド
さて、ものすごい勢いで、しかも当然のように話が脱線してしまいました。というか、ここまででまだ内容についてほとんど触れていないという事実に、自分で驚いています。まだ始まってすらいません。笑点でいうところの、客席のど真ん中で司会者が挨拶している状態です。
舞台袖で前座の芸人が、客席の緊張をアイスブレイクするためにスタンバっている状態でもあります。
司会「ということで今日の演芸をご紹介しましょう。漫才です。あした順子・ひろしさんです。どうぞ〜」
順子「あんたワイルドスピート観たのかい?」
ひろし「観たよ。新宿のピカデリーで」
順子「頭がピカテリーの間違いじゃないのかい」
ひろし「バカ言うんじゃないよ。俺、この映画観て、自信持ったんだから」
順子「なんであんたが自信持つのさ?」
ひろし「主役も仲間もみんなハゲてるんだけど、かっこいいんだよ」
順子「バカ言うんじゃないよ。黒くてムキムキでハゲてるからセクシーなんじゃないかい! あんたみたいなポキポキの白いじじいが無駄にハゲたって、周りが心配するだけなんだよ」
ひろし「ひでーこというなぁ」
順子「向こうの俳優はハゲでもかっこつくのよ。日本の役者であんだけハゲてて主役はれるのなんていないからね」
ひろし「いるじゃないかい。モト冬樹とか」
順子「モト冬樹が主演したのって「ヅラ刑事」でしょうが。ハゲじゃないと主演できないのよ、あれは」
ひろし「文句ばっかりいいやがる。そういうあんたは観たのかい」
順子「観たわよ。私みたいなピッチピチのギャルたちのお尻と、ピッカピカの車のお尻のモンタージュからかっこよく始まるんだから」
ひろし「ピッカピカの頭の方が印象的だったよ、俺は」
順子「あんただけよ、それは。冒頭からいきなり、主役のスキンヘッドVSもじゃもじゃの黒人のカーチェイスで迫力あったじゃないの。そこを語らなきゃ」
ひろし「覚えてないよ。ずーっとカーチェイスだらけでなにがなんだか」
順子「単に頭がボケてんでしょうが。最初のカーチェイス、すごかったじゃないの。ゴール直前でボンネットから火が吹いて、前が見えないからバックで走るシーンとか、迫力満点」
ひろし「あんたの顔のが迫力満点だよ」
順子、ひろしの頭を叩く
ひろし「あんまりひっぱたくなよ」
順子「どんな映画なのか語りなさいよ、ちゃんと観たくなるように」
ひろし「たくさん車が出てきちゃ壊れて、終始もったいない映画だよ」
順子「貧乏くさいこというんじゃないわよ。今どきは全部CGなんだから大丈夫なのよ」
ひろし「だったら役者の髪の毛もCGでどうにかしなさいよ」
順子「気にしてたらどうにかするでしょ。気にしてないからどうにもしないのよ!」
順子、ひろしの頭を叩く
ひろし「叩きすぎだよ。俺は気にしてんだよ、これでも」
順子「なにを?」
ひろし「ここにある毛がなくなった!」
順子「そんなの心配しないで! これやるから!!」