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「この世界の片隅に」はおすすめだけど・・・

こいぬまちはる こいぬまちはる


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私はすずを好きじゃない。それも、嫌いに限りなく近い「好きじゃない」な気がして何とも言えない気持ちだったから。

主人公すずのおっとりとしたマイペースな性格は持って生まれたもので、作ったものじゃない。分かってはいる、もちろん。でもどうしても、イラッとしてしまう。なぜあなたはそうしてられるの? 自分に出来うる限りの努力をした上だとしても、そう無邪気に。彼女がただボーっとしてるだけだとか、楽に生きているなんては思っていない。我慢し、抑えて、つらい思いをしているのは推して知るべし。でも、それを上回る無邪気という眩しさは、攻撃に感じるほど強いもの。

小さい頃から妹の世話や家の仕事をしてとってもエライ子。でも私は、そんなすずにつらく当たる兄の方に気持ちが寄ってしまう。

あの時代の長男への期待や重責は計り知れず、ましてや戦況が怪しくなるにつれ、自分の希望や、あれが食べたいなど日々の小さな望みさえ家族を優先していたかも知れない。徹底して自分を律しているその目に、すずはどう映っていたのかな。健気に笑顔で仕事をコツコツこなしながらも、自分の生きるリズムを持ったような妹は、眩しく、羨ましい存在だったんじゃないかな。

すずはいつも一生懸命で、人に優しい。イヤなことがあっても表に出さず、好きな絵を描くことを拠り所にして、日々の中に小さな喜びさえ見つけようとする。本当に可愛い子。素敵な女性。嫁に出た先でも受け入れられ、まさに愛されるに値する人。

でも私はやっぱりすずよりも、厳しく接する義姉に目が向いた。

義姉の径子(けいこ)を見ていると、「広島に帰れば」とかの嫌味も聞こえたが、自分と全然違うようなすずにできるだけ合わせるようにし、充分尊重しているように見えた。意地悪な小姑なんかでなく、逆にすずを好きなんだなぁと感じられた。

夫も自分で選び子をもうけ、自分で実家に戻る選択をした径子。これまでの人生を自力で切り開いて生きてきたその目に、すずはどう映っていたのかな。請われた先に嫁ぎ流されてきたようでいながら、やはり自分の生きるリズムを持っているように見えたのかも知れない。

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