「矢野ちゃん(※私のこと)はどこ出身?」
「高校は広島で、大学生になる時に上京してきました」
「じゃあ一人暮らし?」
「はい」
ここまでは会社の飲み会でよくある流れだ。だが私の場合、この続きがある。
「一人暮らしですが、今は兄が居候しています」
年上の男が居候しているという事実に驚く人たち
えっ!?
大抵の人は驚く。兄妹で一緒に住んでいることを「すごい。ありえない。自分だったら耐えられない」と評価する人もいれば(「1日で発狂する」という人もいた)、居候している人が“兄”、すなわち“年上の男”であることに驚く人もいる。「(妹である)矢野ちゃんがお兄さんの家に居候しているのではなく、お兄さんが居候しているの!?」と。居候している人が、年上でも性別が女の姉、もしくは男でも年下の弟だったら、さほど驚かれることはなかったのだろう。
兄が居候を始めたばかりの頃は特に何も思わなかった。だが兄が居候しているという事実を話すと皆驚く。多くの人に驚かれるという経験をし、兄が居候するのは珍しいケースなのかもしれないと思うようになった。
「一刻も早く追い出したい!」居候させることのデメリット
確かに不便と言えば不便である。一人暮らし用の部屋を借りているのだから、2人で住めば窮屈なのは当然だ。1Rで個室も脱衣所もない。
プライベートな空間はないに等しい。
1 エロ本もAVも隠せない
私のエロい漫画を隠す場所など存在しない。仕方ないから本棚に堂々と並べてある。兄は私のエロい漫画の存在に気付いていながら、一度も言及してきたことはない。(言及してきたら当然追い出す所存!)
そういえば兄はAVをどこに隠しているのだろう。
隠す場所なんてないから、見ていないのだろうか。いや、今時ネットでいくらでも見ることができるから、物として所有する必要はないのかもしれない。“今” が “ネットが普及した現代”で良かったね、お兄ちゃん。
2 照明とエアコンで争い勃発!?
☆照明☆
毎日2人が同じ時間に起床し、同じ時間に就寝すれば問題ない。だが残念なことに、2人の活動時間は大きく異なる。芸能業界で働く兄は、起床時間が遅く、就寝時間は遅い。どちらか一方が明るいまま寝るか、暗いまま活動するという我慢を強いられる環境にある。私は兄が寝ていても遠慮なく照明をつけている(かわいそうに)。私が寝ている時、兄は暗いまま活動している(ありがとう)。照明に関しては兄が譲ってくれている。まぁ居候しているのは兄なんだから、当然だよね!?
☆エアコン☆
体感温度の異なる兄妹。兄がエアコンをつけ、私が消す。この繰り返し。兄はつけたばかりのエアコンを切る私を見て、悲しそうな顔をする。「せっかく俺が快適な温度にしようとエアコンをつけているのに、なんでこのバカな妹はわざわざ消すんだろう」と思っているに違いない。
追い出したくても追い出さない、その理由とは?
居候させることの意外なメリット!
一人暮らしのメリットを享受できず、かと言って実家暮らしのメリットが付いてくるわけでもない、デメリットしかないような生活だ。
それなのになぜ兄の居候を許容しているのか。それには2つの理由がある。
1 兄は貴重な(?)家賃収入源!
兄は学生ではない。働いている。だから当然家賃は支払ってもらう。本当は家賃の半分を負担させても良いのだが、私は優しい妹なので半分よりは安くしてあげている。大学生が一般的な時給で1日3時間、週2回アルバイトをすれば稼げる額で居候させている。しかも! なんと! 光熱費はタダ!
なんて優しい妹なんだろう!! 兄はもっと私に感謝するべきである。
2 親が安心する
図々しく寝そべっている兄を見ながら、世の中なんとかなるもんだと思う今日この頃。兄の辞書に「遠慮」という言葉はないらしい。美容師さんに愚痴をこぼしたら、「それくらいの図々しさがないと世の中生きていけないわよ!! 素敵なお兄さんじゃない!!」となぜか兄を褒め出す始末。
母も母で、「兄妹一緒だと安心ね~」なんて思っているみたいだが、「いやいや、安心なのは分かるけど1Rだよ? 私のプライベートはどこよ? 兄妹とはいえ男女だよ? 間違いが起こらないとも限らないよ? 近親相姦だよ?」とありえない発想で内心毒づく。
家事の負担は変わらない
ちなみに、家事の負担は2分の1になるからラクになっているんじゃないの? と思うかもしれないが、家事の負担は変わらない。分担できる部分は分担している。でも、そもそも量が2倍になっているから、結局変わらないのだ。洗濯物は2倍に増えるし、ゴミの量も2倍。洗う食器も2倍。2倍になったものを2で割っても元の数になるだけである。
「もうすぐ引っ越すって言っていたけど、そろそろ引っ越せそう?」
「来週な」
このやりとりを4回以上はしたと思う。つまり引っ越すと言い出してから1ヶ月は経過しているということ。「明日こそは頑張る」と言いながら永久に“明日”はやってこないものである。
ではまた!
次も読んでね!
きゅうり(矢野友理)