結婚相手のことを「好き」と言えちゃうような人が好きだ。もちろん、結婚相手を前にして、ではない。結婚相手のいないところで、だ。
恋人自慢ならまだわかる。恋人は、結婚相手よりも精神的希少価値が高くなりやすい。いや、本当は希少価値に差などなく人類みな同じなのだけれど、けれど悲しいかな、結婚してしまえば人は一気に安心してしまうのも世の常で、結婚相手がそばにいるという事実はすぐに日常になってしまう。むしろ最近では、「旦那◯ね」というサイトまでもあるらしい。
そんな中でも愛を見失わず、それどころか他人に向けて「好きなの!」と言えてしまうなんて、尋常じゃない。偉人としか言えない。素晴らしいし、見習いたい。
こんな話を急にはじめたのには理由がある。
先日ファミレスで作業をぽつぽつと頑張っていたら、近くに座っていた明らかに主婦とみられる二人組が、きゃっきゃとはしゃぎながら会話をしているのが聞こえてきたのだ。
まわりがワイワイとやかましかったこともあって、彼女たちの会話は断片的にしか聞こえなかったが、いくつかの単語ははっきりと聞こえた。
「好き」とか「最高じゃん!」とか「旦那」とか「かわいい」とか。
それらを安易につなげるとしたら、その人の旦那はかわいくて最高なのだろうし、きっと「好き」なのだろう。いいなあ。
わざと彼女たちのそばを通って、レジへと向かった。ちらっと視線をやってみると、思っていたよりも年上だった。そこで最後に耳にしたのがこの言葉だ。
「困ってるんだよ。真剣に・・・」
さっきまで(おそらく)のろけていたような人が、一体何に困っているというのだろうか。
きっと彼女の事情はこうだ。