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旦那のことが好きすぎる【連載】さえりの”きっと彼らはこんな事情”

さえり さえり


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愛おしさが爆発的に溢れでて、新幹線ひかりと同じほどの速度で駆け寄って「結婚して!」というと、「よくわかんないけど、俺もそうしたいと思ってた」と笑っていた。そのときから、サチコは一生この人を好きでいたいと願ったのだ。わたしを「サチコ」という名前にふさわしい人生にしてくれたのは、むっくん、あなたなのね。
そして今。結婚から4年、出会ってから6年が経とうとしているにもかかわらず、むっくんへの愛は変わっていない。変わらないどころか、溢れて溢れて、おかしいまさか増えるワカメか? とさえ思っている。

毎朝起きて一番に目にするそのまぬけな顔に感動するし、起きた後の変な形の寝癖は茹でて食べてしまいたいくらいだし、「朝ごはんなに?」と聞いてくるときの「に」のあとに小さい「ぃ」が入っているような言い方も愛おしすぎてよだれが出てしまいそうだし、ぽにゃっとしているお腹に人差し指を埋め込むあの感触も好きだし、首筋にある小さなホクロは一番星みたいだし、それから、カバンから出したイヤホンは必ずねじねじしているところも、爪を噛む癖を見つかったときに恥ずかしそうにするところも、財布を出したときに必ずガムの包み紙が挟まって出てきてしまうところも、手の甲にメモを書いているのを忘れたまま鼻の下をこすって黒くなってしまうところも、おしぼりを使ったら必ず小さく折っているところも、靴紐を結んだあとにほどけないように固結びをするところも、好きだ。

もうなにもかもが好きなのだ、どうしようもないほどに好きで好きで、心臓は痛いし口元は緩みっぱなしだし、何度も可愛いシーンがフラッシュバックして、もはやこんなのはドメスティックバイオレンスさながらである。

むっくんのことが好きすぎなの、と友人に相談すると鼻で笑われて「いいじゃん」と言われるけれど、全然良くない。本当に困ることなのだ。

一番困っているのは、なかなか眠れないことだ。どれだけ眠たくてもどれだけ辛くても、むっくんが眠るときに聞こえてくる不規則な寝息を聞くまでは寝られない。その瞬間、ぴくって筋肉が動く瞬間のむっくんを見られるのは世界中でまぎれもなくわたしだけなのだし、それを見逃して明日を迎えてしまうなんて耐えられない。そのせいで時に寝不足になる。困った。本当に困っている。

「いいじゃん、旦那のことが好きなんて羨ましいよぉ」なんて友人は言うけれど、わかっていない、全然わかっていない。好きすぎると、日常に支障があるのだ。

なにか良いアドバイスはないかと、今日も友人に相談する。きっと今日も「羨ましいよぉ」とか「いいなぁ」とか頓珍漢な答えが返ってくるだろう。わかっていても相談するしかない。解決策はいずこだろうか。

ああ神様、サチコは本当に困っているのです。一体サチコが何の罪を犯したというのでしょう。むっくんを好きすぎるこの気持ち、どうにか止めてはくれまいかーー。

 

と、まあこんなところだろう。ああ、可愛くてピュアなサチコ。サチコの人生がこの先も幸せに満ちていますように。それにしても、サチコみたいな結婚したいものだ。自分を好きでいてくれる人を見つけるよりも、自分が好きになれる人を見つけるほうが人生においては難しくて幸福なことだろうな。

サチコがどんな人なのか、そもそもそんなことで困っているのか、本当のところは全然わからないままだけど。

【過去の「さえりの”きっと彼らはこんな事情”」はこちら】
大豆に似ているエリコ
予約しなかったマリオ
沈黙の彼女が考えていること
”やり投げ”みたいだよ
「結婚する気ある?」

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