そして亮君はステージの上にいた
ライブが始まりました。2階席から見ると、1階スタンディングエリアの観衆の熱狂はもう、台風時の海面よりも凄まじいうねりを見せています。そして亮君が・・・いました。
Photo by Kazushi Hamano
2年前、市ヶ谷の居酒屋で別れて以来の男は、ステージの上にいました。2階席から見下ろしているはずなのに、ステージ上の彼は、雲の彼方、虹の向こうにいるようでした。
一曲目は『握れっっっっっっっっ!!』。47歳無職の僕もいきなり右手を振り上げて絶叫するしかありません。2年前のあの日、僕たちは男性のどの部分がどうダメなのか、激しく語り合ったのです。その記憶が鮮明に蘇ります。
そしてこの曲といえば、これでしょう。
【MAD】マキシマム ザ ホルモン 新録版 “握れっっっっっっっっ!!!!”
Reference:YouTube
さらにその後の経緯を記したこの動画を思い出して、僕、いきなり泣いてしまいました。
【MAD】マキシマム ザ ホルモン 新録版 “握れっっっっっっっっ!!!!”その後のご報告と御礼
Reference:YouTube
いや、そういうバンドなんですよ。まだの方はぜひ両方、見てもらえませんか。
とことんヘヴィー、しかし正確
Photo by Kazushi Hamano
ライブは走り出しました。演奏はとことんソリッドで、サウンドは重く爆発しています。この復活ライブは「耳噛じる真打TOUR」、つまり『Deka Vs Deka~デカ対デカ~』に同梱のCD『耳噛じる 真打』の楽曲を中心に構成されているのですが、ファーストアルバムである『耳噛じる』を徹底的にリアレンジしたそれらの曲、僕は2年前、亮君本人からくどいくらいに「どのような意図でリアレンジしたか」を一曲ずつ説明され、聴き比べをさせられたのですが、あれから2年を経て、実際にステージから聴こえてくる音は、何百回も聴いているCDも、そして想像もはるかに超えて緻密でした。いや、『耳噛じる 真打』のさらに真打といっていい。
Photo by Kazushi Hamano
Photo by Kazushi Hamano
ナヲちゃんの第二子出産のため2年間ライブ活動を封印していたはずなのに、ドラムのキレは2階席でもはっきりとわかり、上ちゃんの4弦も極めて正確、2年のブランクがあったとは到底思えない。そもそも「ラウド」そのものであり、スラッシュメタルでもあり、カオティック・ハードコアな一面もあるはずなのに、その熱狂を支えるのは「正確さ」だという事実に気づかされました。これが随所に出てくる「グダグダしてない、ちゃんとした転調」そして「記憶の中にある、あのメロディー感」に心を揺さぶられる土台になっているんじゃないかと思うんです。
亮君の変貌
そのソリッドな音像形成は、亮君の肉体の変化によるところも大きいのではないでしょうか。2年前すでに、健康のために肉体改造を始めていて、いまではすっかり肥満とおさらばした亮君は、より正確な演奏、緻密なステージとは何かを2年間考え抜いたんだと思います。実際、終演後に亮君と話したところ、「この2年は、スタジオでちゃんと練習していました。久しぶりにステージに立ってヘタになったとか言われたくないんで。いや・・・、もっというと、変わらないね、とも言われたくないんで」
Photo by Kazushi Hamano
その言葉は、ライブのちょうど真ん中あたり、『アバラ・ボブ〈アバラ・カプセル・マーケッボブ〉』そして『ハイヤニ・スペイン』を思い出せばよく理解できます。
『アバラ・ボブ〈アバラ・カプセル・マーケッボブ〉』は、THE MAD CAPSULE MARKETSの上田剛士(AA=)のリアレンジによって正確を通り越した正確さ、つまりデジタルビートに支えられているのですが、その無機質さによって有機的な音が浮かび上がる新しさこそ、2017年のホルモン、進化したホルモンではないでしょうか。僕は、めちゃくちゃノレましたね。ヘドバンせざるを得ません。いや、Zepp Osaka Bayside の2階席でヘドバンは、わりと難易度高いんですよ。
Photo by Kazushi Hamano
Photo by Kazushi Hamano
『ハイヤニ・スペイン』はアルバム『ロッキンポ殺し』から。亮君の6弦はもちろん、歌にもソリッド感がある。これはライブで観て、ビジュアル面からより感じることでしょうね。だって痩せてるんだもん。