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20代のあれはなんだったんだ【連載】さえりの“きっと彼らはこんな事情”

さえり さえり


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もう無理、とばっさりと切り捨てたはずなのに、数日経つと彼への愛がまたにょきにょきと芽生えてしまう。そしてそのタイミングで「ノリコぉ、俺変わるからぁ」と言われてヨリを戻す。これは何かに似ている・・・・・・とノリコは考えていた。

あぁ、わかった豆苗だわ。

何度切っても生えてくる・・・・・・。根を捨てない限りは何度でも芽生えてしまう。一度目ほど美味しくは育たないのに、わかっていて根をまだ捨てられずにいる・・・・・・。

こんな関係のことを、カナエに話したことはない。「いつか幸せにするから」と言われた言葉を信じているなんて、自分でも笑ってしまうから。

「絶対いい結婚しようね」
「妥協とかナシだからね」

・・・・・・二人でそう、言い合っていた。

なのに。
なのにだ。

この前飲みにいったとき、カナエはこう言ったのだ。

「あたし結婚するかも」

「え、誰と?」
「この前フェスで会った人」
「え、何それ聞いてない何、誰? 何してる人?」
「音楽。バンドマン」
「は? なに? 出演者? 有名な人ってこと?」
「いや普通にナンパされて。6歳年下。26歳。いつかメジャーデビューしたいんだって」
「え、なにそれ?」
「んー? 夢追いかけてる人って、やっぱいいかなーって。しかも彼の音楽、好きだし」
「いや・・・・・・。てか、なんでそれで結婚になるわけ?」
「なんか向こうが『こんなに好きになった女いない』とか言って。この前『俺とこの先も居て』とか言って。指輪はないけど、シロツメクサで指輪とか作られて(笑)さすがに笑っちゃったけど、まー悪くないかも〜って」

・・・・・・え? 冗談じゃない。え、あたしたちってそんな感じだっけ? そういうの一番嫌よね? 「夢」とかいいから「現実」を見ろよって散々男のロマンを笑ってきたような二人だったじゃない。そういう女でいようねってそういう協定を結んで、たとえ黒船に乗ったペリーばりのイケメンがやってきてもあたしたちは条件が揃っていないと開国しませんってそういう話だったじゃん、どうして?

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