もしもラーメン屋のガンコ親父が単に強がってるだけだったら

上田啓太 上田啓太


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ガンコ親父といえばラーメン屋である。

こだわりぬいてラーメンを作るのである。客が気に入らない態度を取れば追い返すのである。スープを残すなどありえない。接客マニュアルなどくそくらえ。それがガンコ親父のラーメン屋である。

しかし私なんかは、人間を矛盾した生き物として捉えている。外見がそのまま内面の反映だとは思わない。美女の内面は意外とオッサンだったりするものである。それが私の人間観である。

ということで、ガンコ親父の内面は意外と乙女だったりするわけである。

「わし、ほんとはガンコじゃないんだよ・・・?」

そんなことを思って、ガンコ親父は一人で泣いているのである。それが人間の真実である。険しい顔をして腕組みしている人間が心のなかでも腕組みしていると思ったら大間違いである。

夜とは昼の尻ぬぐいをさせられる時間である。昼間の反動は夜に出るのである。だからバイトたちを帰らせたあと、真夜中の厨房でガンコ親父はひとりで泣くのである。

「わしのラーメンがどうして塩味かわかる?」

誰もいない厨房でつぶやくのである。

「わしの涙の味なんだよ・・・」

もちろん、誰も聞いてくれないのである。ここにガンコ親父のせつなさがある。いちどガンコだと思われればそれまで。人間社会の厳しいところである。ガンコの裏にある強がりを見てくれる人はいない。誰かがガンコ親父の悲痛なさけびを聞いてやるべきである。奥さんだろうか? しかし奥さんは友人に愚痴っている。

「あの人、ほんとうにガンコでねえ・・・」

逃げ道はないのである。

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