• MV_1120x330
  • MV_1120x330

もしもラーメン屋のガンコ親父が単に強がってるだけだったら

上田啓太 上田啓太


LoadingMY CLIP

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「わし、しょうゆラーメン作っても、豚骨ラーメン作っても、塩ラーメンになっちゃうんだよ。涙に涙を継ぎ足して、秘伝のスープを作っているんだよ。自分の弱い心を隠すために、毎日がんばって腕組みしてるんだよ。それはわしなりのSOSなんだよ。強く締めすぎたハチマキに気づいてほしいよ」

「強く締めすぎたハチマキに気づいてほしいよ・・・」

これは、ガンコ親父と西野カナがコラボレーションしたときに生まれる歌詞である。しかし西野カナもガンコ親父にむけては歌を歌わない。西野カナが歌うのは、あくまでも同世代に向けた歌である。こうしてガンコ親父は孤立していくのである。

「ナルトの模様より複雑な、わしの心・・・」

誰かがガンコ親父の声を聞いてやるべきである。ガンコじゃなくていいんだよ、強がらなくていいんだよ、今だけは腕組みもハチマキもやめて、ポケモンかわいいとか、パンダかわいいとか、手乗り文鳥ってほんとに手に乗るんだねとか言っていいんだよ。ガンコの看板、今日だけは降ろしていいんだよ。

しかし誰も言ってくれないのである。だからガンコ親父は泥沼にはまる。ガンコさを強調しようと頑張って、店内に親父のこだわりを大量に貼るのである。どれも毛筆で荒々しく書かれている。店内私語厳禁。黙ってラーメンを食え。まずはスープを飲め。店内では親父がルール。

しかし親父は、夜中の二時に店内の貼紙を見て、つぶやくのである。

「習字の文字、ほんとは丸ゴシックにしたいよ・・・」

むろん、丸ゴシックにはできないのである。

だからガンコ親父は今日も強がって店に立つ。若者がスープを残せば「てめえ、スープ残してんじゃねえ!」と怒鳴るのである。ほとんど義務感である。そして夜になれば昼間の自分を思い出して泣く。ますますラーメンの塩味が強くなる。夜とは昼の尻ぬぐいである。真夜中に親父は鏡にむかってつぶやくのである。わしはガンコ、わしはガンコ、わしのラーメンは日本一、わしのラーメンは日本一、わしのラーメンは日本一・・・。

「でもわし、ラ王のことめちゃくちゃウマイと感じるんだよ・・・」

これが私の人間観である。ふらりと入ったラーメン屋で塩味のラーメンが出てきたときは注意せねばならない。それは、親父の涙の味である。
 

【このライターの過去5回の記事はこちら】
一人のニートとして女性を口説く方法
もしも三人のアホが地球温暖化問題を解決しようとしたら
都会的なセンスのオシャレな怪談を書いてみた
ナルシストを極めれば恋人など不要なのでは?
もしも私が小学生女子で、二人の男子に口説かれたらどうしよう?

街角のクリエイティブ ロゴ


  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP