夏の終わりに誰と何の映画を観るか。毎年映画好きがぶちあたる難題です。もし選択を間違えば夏はたちまち台無しになり、2学期、3学期と深い傷を負ったまま過ごさねばなりません(今は学期もくそもないが)。普通なら思い切って気になるアイツを誘うところでしょうが、何を血迷ったか今年は「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」を姪っ子たちと観る 、という選択をしてしまいました。
「夏休み1日くらい面倒見ろよ、無職だろ」と妹にせがまれたのです。無職は無職なりに忙しいという理由はなかなか通じません。
さて今作は、1993年にフジテレビで放送された岩井俊二監督のテレビドラマが原作になっているのですが、自分の周囲には多くの原作ドラマファンがおりまして、ちょっと気になっていたのと、アニメだし子守に最適そうだという理由でこちらの作品を選びました。
Reference:YouTube
どうででしょうか。予告編からも上質感が漂っており、綺麗な風景に、作画もなかなか良さそうです。
ストーリーの要約とすると、主人公の典道がタイムリープを使い、ヒロインなずなを救おうと画策するお話です。またまたタイムリープかよ・・・って感じがしないでもないですが、「キュン」とする場面がきっといくつもあって、自分には眩しい作品なんだろうなぁと思っていたのですが、全然違いました。
この映画、なかなかの難解パンチを食らわせてきます。ボケーっと眺めているととんでもないことになりそうなのです。ちなみに今回のコラムも難解です。ふんだんにネタバレもします。
「キュン」というより「は?」
難解さには2種類あります。「分からせようとしている難解さ」と「そもそも分からせようとしていない難解さ」です。前者は内容が複雑で、どうしても分かりづらくなってしまうようなもの。後者は、内容がぶっとんでいて結果よくわからなくなってしまったもの。
例えば「君の名は。」は前者です。前前前者です。逆に「崖の上のポニョ」など「もののけ姫」以降の宮崎駿作品なんかはわりと後者です。この場合、大人は前者に、子供は後者に共鳴しがちです。世界の前提となっている理屈が若干違うので、「崖の上のポニョ」なんかをいい大人が見ると「宮崎駿監督、ついにヤキがまわったか」と思ってしまうのですが、子供はノリで受け取れるので「ポニョかわいい〜」で腹に収まるわけです。まぁ子供はアニメならなんでも面白いんですがね。
今作は、前者の「分からせようとしている難解さ」を引き受けていますので、わりと大人向き。さまざまなメタファー(丸いもの、回転するもの)やモチーフで間接的に(映像的に!)世界を描こうとしているのには好感が持てるのですが、特にうちの姪っこはバカなので、それらのほとんどに気づくことはありません。というか姪っ子に関しては映画以前の問題であり、まずノーモア映画泥棒の意味がわかっていませんでした。
「劇場内での映画の撮影・録音は犯罪です」というナレーションに対し「犯罪って何??」という哲学的な質問をかますのです。「法律をやぶることだよ」と教えると「法律って?」と聞き返され、果てがありません。このまま育てば確実に劇場内で撮影・録音をする大人になることでしょう。
その後、劇中で「パンチラ」というセリフが飛び出せば「パンツがどうしたの?」とパンチラの説明をせがまれたりと、あまり映画に集中できませんでした。映画よりも姪っ子の将来の方が気になってしまったのです。それがゆえにより難解に感じたのかもしれません。
将来が不安になるほどのバカさです。