そもそも海外の映画祭は狙い目
結果、何億もかけて撮った映画よりも自主で撮った「自転車」の方が、多くの人に届いた感じがしました。「自転車」で評価されたから本作を撮ろうって気になりましたし。
だって岩井俊二監督も今回の映画にコメント寄せていますけれど「自転車」を観て渋谷さんの作品に一目置いてるわけですからね。
Reference:YouTube
傑作短編映画「自転車」の世界観にやられ、
「千里眼」のロサンゼルスプレミアに
矢も盾もたまらず駆けつけたのは何年前だったろう。
いずれの映画にも主演してる佐生有語が素晴らしくて
自身の映画にも出演して頂きました。
ようやく日本でも公開されるんですね。おめでとう!
映画監督 岩井俊二
渋谷さんってとにかく賞をとりまくるじゃないですか。ローレルマンって映画にしたいくらいなのですが、本作も、ロサンゼルスアジア太平洋映画祭 グランプリやグアム国際映画祭でグランプリ・最優秀演技賞、ハートランド映画祭で長編部門賞、そのほかにも国内外全13映画祭にて入選・受賞って、まるで地引網のようですが、そもそもどうやって海外の映画祭に出しているのですか? 僕はぴあフィルムフェスティバルとか水戸短編映画祭くらいしか出したことがないので気になりました。
filmfreewayとかwithout a boxっていうウェブサイトあって、尺とか応募受付期間とかデータを入れると出すべき映画祭をある程度選んでくれるんです。ちょうど今、新作短編を23個の映画際に出していますが、だいたい400ドルくらいかかったかな。
4万円ってなかなかリーズナブルですね。でもちゃんと受賞するのがすごい。
例えばイラクの映画際に日本からの応募作品がどれくらいあるのか考えると、めちゃくちゃ少ないはずで、それだけでも特異性がある。誰でも知っている賞にも出すけど、何十年も続いていて歴史がある、でも日本人に知られていないだろう映画祭は狙い目だったりするんです。そこで入選したら儲けもんです。
でも自分の作品を翻訳して字幕付けたことがあるのですが、本当に大変で、海外というだけで尻込みしちゃいます。
日本でもようやく出品を代行してくれるガラコレクションってサイトが出てきて。1本1万円くらいかかるけど。字幕とかもやってくれるんじゃないかな。
金ならたくさんあるから自分も出してみようかな! ・・・と思ったけれどまず映画撮らないと。ガラコレクションを使うために、ふつふつと撮りたくなってきました。
いいことだ。
そもそも自主映画だからこその親近感
渋谷さんがさっき“俺でもできるんじゃないか”と思って「自転車」という作品を撮ったとおっしゃっていましたが、自分も本作を見て、非常に良い意味で自分でも撮れるかもって思ったんです。自主映画って予算がかけられないからこそ工夫が面白いなぁと思って。例えば病院で種田が精子がないことを告げられるシーン。医者の手元のアップと種田の顔のアップしかない。
そこに医者の声がオフリップで聞こえる。病院じゃなくても撮れますよね。場所を手配するとかかってしまうお金の問題をカット割りの工夫で解決していて、お金じゃないぞという品性を感じました。ハリウッド映画は凄いけどどこか他人事というか、いきなりそこは無理だなあ、と。でも自主映画って割と自分事のように考えられる。自分も撮っていいんだという肯定感に包まれるというか。
でもあれ本当に病院借りて撮ってます。ガッツリ借りてます。
僕の気持ちを返してください。そうなんですか?
病院使ってるのにあの撮り方なくないですか? もったいないなあ、と。
逆に贅沢ではありますが・・・。
まぁね。でもこんなに寄って撮るの! って思った。
うちでいいじゃん。
まぁ撮影監督のプランがあるから・・・。
医者はだれがやってるんですか?
あれは佐生さんの付き人だったかスタイリストだった人。割と上手でした、淡々としてて。
でも金をかけるところはかけているなぁと。例えば本編では大量の蝉の抜け殻が出てきますが、蝉の抜け殻っていくらくらいするんですか? 安いか高いかもわからないです。
いやいや、集めたんですよ。ちょうどこの脚本書いてる時にパニック障害の絶頂期で、1日パキシル40ミリ飲んでて。だから外に出るのも大変な頃でした。
すでに蝉っぽいエピソードだ。
でもこれ撮影するとなると、夏に集めないと間に合わないから、頑張って集めて。母親にも手伝ってもらって一年間保管しておきました。
蝉の抜け殻なんてありますか? 最近見かけた記憶がないです。
だいたいわかってきます、探してると。ぶっちゃけ千里眼いらない。
本日はありがとうございました。
千里眼がなくても蝉の抜け殻を集められることがわかってしまったインタビューではありますが、作品の立ち上がり方を聞くにつれ、再び何か撮れるかもしれないと感じました。なにごとも自分から始めなければ動きません。でも同時にやっぱり大変そうだなとも思いました。
そんな作り手の思いをダイレクトに感じながら、またこの映画を観てみようと思います。スタッフの皆さん、お疲れ様です!
「千里眼CICADA」
2018.2.17(土)〜2.23(金)
池袋HUMAXシネマズ
1週間限定レイトショー(連日20時半上映スタート)