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ママ史上最長の休み【連載】松尾英里子のウラオモテ

松尾英里子 松尾英里子


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そして、もう一度考えた。さて、今しかできないことはなんだ。

ぱっと思いついたのは、コンタクトレンズを替えにいくことだった。乱視のひどい私は、もう20年近くハードレンズを使い続けている。これは1年に1度くらいのペースでリニューアルすることを推奨されているのだが、子どもがいると、そういう病院系は足が遠のきがちだ。今のレンズは、替えて、2年になる。

今しかできないこと、と考えたのに、コンタクトレンズを新しいものに替える、という、なんというか、あまりオシャレじゃない実務的な用事しか浮かんでこないところ。我ながら笑ってしまう。でも、今こそチャンスだ。

時間は限られている。善は急げ。友人との待ち合わせは銀座と決めていたので、その近くの眼科に向かうべく、地下鉄に飛び乗る。向かいの席に座った女性と、もう高校生くらいの娘さんが、2人で何やら楽しそうにずっと話している様子を見ては、私もいつか娘とこんな風におでかけができるのかしら、と考えた。

そうして、銀座に到着。事務的にコンタクトレンズを替え、久々の歩行者天国に圧倒されながら、友人に会った。

なんでも気兼ねなく本音で話せる友達は決して多くない私だが、その分、波長の合う人とはお茶1杯で何時間でも何の話題でも喋っていられる。なんなら、お茶もなくたっていい。私と同じように、かつて局のアナウンサーをしていて、子どもも二人いて、という彼女とは、社会人になってからの付き合いだけど、もうずっと昔からの友達のようだ。

「子連れではいけない店に行こう」と、品のよさそうなカフェに入る。子育てのこと、仕事のこと、社会問題や芸能ニュースまで、話が止まらない。日々のイライラも悩みも何かと似ていて、「分かる~」「わたしも~」ばかり。「女は共感の生き物」と言われるが、その通りだ。こういう他愛ない会話での共感が、どれほど心を軽くしてくれるか。夫婦の会話ももちろん大事。でも、もしかしたら、時にママの心を癒すのは、同じ境遇にある気を遣わなくて済むママ(←ここ大事)なのかもしれない、と思う。足取り軽く店を出たときには、時計はもう7時になっていた。

それから彼女と別れ、でもまだ帰るには早い気がして、銀座から有楽町にかけてブラブラしてみた。

7時。

いつもはお風呂を終えて、夜のNHKニュースを耳で聞きながら子どもの歯を磨いたり、本を読み聞かせたり、彼らの就寝モードに導く時間。母親としての生活が幕を下ろしゆく時間。

街の光。夜の風。繁華街特有の匂い。ふと、独身の頃の感覚がぶわっと蘇ってきた。

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