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ママ史上最長の休み【連載】松尾英里子のウラオモテ

松尾英里子 松尾英里子


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当時、夜の7時は、まだ浅い時間だった。まだまだなんでもできる。買い物、習い事、食事、楽しみはこれから。色恋沙汰もここから動き出す。そんなことを懐かしく思い出した。

最近、あの、大学入学から結婚して子どもを授かるまでの日々を、ひとつの時代だったのだ、と捉えるようになった。小学校時代、中学校時代、高校時代、そして大学+独身時代。今いるのは、その次の母親時代だ。

日々暮らしていると、さすがに高校生に戻りたいとは思わないが、それでも、大学+独身時代が懐かしくなる時がある。実際まだ周囲には独身でバリバリ働いている人も多く、そんな彼ら彼女らの身軽さを羨ましく思う気持ちがないといったらウソだ。そして、母親としての悩みにぶち当たるたび、「あーあ、私もまだ独身だったら・・・」と思う。やり場のない思いが湧く。

だがそんな時、「あれはひとつの時代だったのだ」と思うと、なぜか苛立ちが静まる。そんなこと考えても仕方ないではないか。今さら「江戸時代に行ってみたい」とか言っても行けるはずがないし、行ったところで、着物の着方は分からないし、柔らかいトイレットペーパーはないし、違うことが多くてきっとストレスいっぱいだ。極端な例まで考えたりしているうちに、心の波は、凪に変わる。

ちなみにポイントは「時代」という言葉だと思っている。5年前、と聞くと、ちょっと前みたいな感覚だが、「時代」というと大昔のイメージになる。言葉遊びのレベルだが、それで気の持ちようが変わるなら、いいではないか。

気付けば9時半だった。有楽町の駅前は、10年前と同じようににぎわっていた。土曜日だからか、サラリーマンの姿よりは若者が多い。大学生と、新社会人と思われるグループがいた。笑ったり泣いたり、胴上げしたり、独身時代を生きている彼らにはエネルギーが満ち溢れていた。そして私は「よし、私の時代に帰ろう」と呟き、地下鉄の階段を下った。

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