一味も二味も違う、本のセレクト
さらに注目すべきは、地域の作家たちを大切にしていることです。店内に入ってすぐの場所にででんと構えるのは、「アメリカ北西部出身作家」のコーナー。フィクション、ノンフィクション、実用書、絵本とジャンルを問わず様々な本が置いてあります。
レシピが並ぶ一角へ目を移すと、そこに置いてある本も尋常ではありません。「ノマド料理」に「昆虫料理」って、どうしたらそのチョイスになるの? というかノマド料理ってなんぞや?(何やらスタイリッシュなおもてなし風料理でしたが)
この世にこんな面白いレシピがあったのかと驚き、選んだ書店員さんと話がしてみたくなります。
そうそう、雑誌も忘れてはなりません。アメリカでは特に雑誌の発行部数が著しく落ち込んでいて、こだわりある本屋さんでも雑誌のチョイスはいまひとつというケースがあるのですが、エリオットの雑誌コーナーはとても元気です。アートブックと一緒に置いてあることに、何だか納得してしまいます。
もう一つエリオットらしいと思うのが、LGBTQ関連本のコーナーがあること。同性婚を認める州が増えているとはいえ、未だにうっすらとした偏見が社会に漂っているアメリカ。先日授賞式があった2016年アカデミー賞でも、映画『キャロル』『リリーのすべて』がノミネートされたことが驚きをもって報道されたくらいです。
エリオットが建つキャピトル・ヒルは、ヒップなお店が次々現れる活気あふれた街なのですが、1960年の初頭からゲイ・レズビアンにフレンドリーなエリアとして発展してきたという側面もあります。道路にはレインボーカラーの交差点があります。
「ゲイフレンドリーな街はクリエイティブで、イノベーションも起きやすい」というCNNの調査がありますが、この一つの本棚から、エリオットの活気、ひいてはこの街のクリエイティビティがうかがえるようです。
以上、シアトルで一番かっこいいと思う、エリオット・ベイ・ブック・カンパニーでした。本好きの方、クリエイティブな刺激を受けたい方、シアトルを訪れた際はぜひ覗いてみてください。