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好きなことを仕事にすると人間はどうなってしまうのか

加藤広大 加藤広大


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shigoto_eye

「好きなことで生きていく」というのは最早死語のような気もしますが、好きなことを仕事にしたり、なりたかった職業をいざはじめてみたら、社会が要求してくる鬼理不尽に巻き込まれプチ絶望してしまうのは一種の通過儀礼だと言っても良いでしょう。

私も一応、好きなことを仕事にして時折飲み代煙草銭にも事欠きつつ、なんとか生きている者です。

そうやって生きていると、友人知人に「いいなー好きなことを仕事にして」「好きなときに仕事していいんでしょ」とか、ことあるごとに言われます。言われるんですが、声を大にして泣きながら言いたい。そんなことは決して無いと。そして言われると結構傷つくというか面倒くさいということを。

なので、誤解を解くべく、いや、別に解かなくてもいいんですけど、今度言われたら「このコラム見てください」と説明できるように「好きなことを仕事にするというのはどういうことなのか/好きなことを仕事にすると人間はどうなってしまうのか」と、自分自身も再認識するためにこれを書いています。

好きなことを仕事にはできるけど、好きなことは仕事でできない

漠然と「好きなことを仕事にしたいな〜」と考えている人と話をすると、おそらく「好きなことをやってそれが仕事になる」と思っている節があります。

しかし残念ながら、好きなことを仕事にするのはできますが、その仕事で好きなことはできません。

たとえばデザイナーなら、写真素材を渡されて「このカツオをマグロにしてくれ」だの、何も決まっていないのにデザイン納期が「明後日です!」だの、入稿寸前に偉い人の鶴の一声で「やり直しになりました! でも納期ずれませーん!」だの、完成間近になったら「さーせん! 追加画像と文章送ります」だの、デザイン案を送ったら「シンプルでクールな感じで、でも少しラグジュアリーでゴージャスなイメージも入れつつ、Appleの単純さと楽天みたいな馴染み深さ、あ、楽天くらいごちゃごちゃしてなくてもいいんですけど、色はとにかく目立つ感じで、でも安心感は重要で男女どちらから見てもウケるようなイケてるイメージをフラットデザインで!」だの言われる仕事です。

この、思い出すだけでオブラートに包んでも天突きに押し込んでトコロテンにしてやりたいほどの外道どもを相手に立ち回らなければいけません。この哀しみに溢れた状況で好きなこと、できると思いますか?

そうそう、外道で思い出しましたが、この辺りのお話は町田康が著した『実録・外道の条件(角川文庫)』をお読みいただくと、よりリアルに感じられるので機会があれば読んでみてください。傑作です。

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