「かんべんしてくれよ、かんべんしてくれよ」
そう思いながら、こちらは早く開放されたい。なのでしかたなく受け入れることにしたんです。
「ああ、別にいいですよ。僕も猫嫌いじゃないんで、それじゃあ」
と、百歩譲って猫に罪はないですからね、好きなだけ居てもらってもいいんですけど、おばちゃんには居て欲しくない。とにかく取り繕って、その場を去ろうとしたんです。
「ああ、ありがとう! ありがとうね! そうだ、お兄さん、これ持っていってね」
おばちゃんはそう言うと手提げ袋からちっちゃな箱を出してきて、私の手のなかにねじ込んだんです。
よく見るとそれは開封済みのクッキーでした。
もうその瞬間に目の前がサーッと暗くなって、その場に倒そうになったんだけど、何とか踏ん張ってね
「あ、あ、どうも、そ、それでは」
とか言いながら、やっとの思いで家の中に戻ったんです。「なんだったんだあれは、なんだったんだあれは」って、もう頭の中がグチャーってなっちゃってね、混乱しちゃったんです。