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一人暮らしの怖い話「知らないオバサンが敷地内で勝手に猫の飼育をはじめる」

加藤広大 加藤広大


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私はそんなもの置いた覚えはない。「おかしいな、おかしいな」と思って、いろいろ考えてみたんだけれども、どうしても状況が飲み込めない。なんとか声を絞り出してね、呟いたんですよ。

「なんでやねん」

急に関西弁になってしまったのは、ちょっとわけの分からないものに対峙してしまって、強がる意味もあったんでしょうねえ。

でもまあ、目の前にいるのは猫ですから、なんだか可愛い。しばらく見つめ合っていたんです。

「おい、お前、なんでこんなところに居るんだ。それよりも、その居心地の良さそうなソファーはなんだ」

と訊いてみても、相手猫ですから、答えてはくれないんですね。

何分くらい経ったでしょうかねえ。そうこうしているうちに、いきなり後ろから肩を叩かれたんです。

不意打ちだったからもう、背筋がゾクーッとしちゃって、恐る恐る振り返ったら、満面の笑みをたたえた、背の低いおばちゃんが立っていたんですね。

それで再び背筋がゾクーッとしちゃって、もう手もぶるぶる震えちゃったんだ。

なぜか? それはそのおばちゃんがまったく悪気の無い顔をしていたんですね。のっぺりとした、正しいことをしているっていう気持ちがうすーく貼り付いたような、いやーな笑顔だったんです。

「あらぁー、ここの人? ごめんなさいねぇー、この猫ね、ウチじゃ飼えないからちょっとここに置いといてもらえないかしら? 使ってないでしょ? ここ? ねえ? いいでしょ?」

「おえっ、ゔぉえっ」

おばちゃんの目はだんだん血走ってくるし、話は止まらないし、顔は笑ったままだしで、もう本当に恐ろしい。私はもう気持ち悪くなっちゃって、一刻も早く立ち去りたかった。

「野良猫ってかわいそうでしょおー、餌やりなんかはね、私がちゃんとやるから、あなたはなーんにもしなくていいの、ね、だからね、ここね、いいでしょ?」

早口でまくし立ててくるからこれまた怖い。身振り手振りも激しくて、ぶんぶんと手を振り回すものだから、もうカマキリの類にしか見えない。

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