周りが羨むほど仲睦まじいマリコとタカシでしたが、タカシの元カノ（雑貨屋店員）との浮気が発覚し、マリコ怒髪天を衝き離別。ある日PC上で写真を整理していたマリコがこの忌まわしき記憶を見つけ、「タカシが邪魔だ、消そう、現実世界で消せないならば、せめて写真の中だけでも」と画像加工を思い立った、というシチュエーションを想定します。
せっかくなのでもう少し、写真から読み取れる情報を掘り下げてみましょう。場所は海、典型的なバカップルがふざけ合って撮影した写真とでも申しましょうか、マリコが「行かないでぇ〜」とばかりに躍動感のある動きをしつつも、奥のタカシは逃げていくという構図になっています。
これが切り取られた瞬間は、マリコとタカシは確かに愛し合っていたはずです。が、当該写真が「いつかはこうなるのだ」と願望とも言って良い絵面になってしまっているのは、おそらく双方とも、無意識のうちに恋の結末が分かっていたからではないでしょうか。擬似的にお別れをして心を慣らしたり、タカシにすれば謝罪をしていたのかもしれません。どこにでもある悲しい恋の物語でございます。
2人が、ややペアルックに近いスタイリングであるのもバカップル度、そして別れた後に見返した際のマリコの悲哀や、怒りのぶり返しを加速させる、非常に味わい深い場面ですね。
さて、別れた原因をタカシの浮気と設定してしまったため、マリコはおそらくタカシを切り刻みたいほど憎んでいるはず、さっさと悪い夢を、写真から取り除いてやりましょう。
