理由7:「書けませんでした」
なんというか二の句が継げない理由ではありますが、「書いてみたけどどうも面白くなくてボツにした。もっと良いものを書くから待ってくれ」ということで、締め切りを延ばしてしまいました。延ばせることなら、良いものを書いていただいた方がいいですもんね。ただ、時間があればあるほど良いものが書けるという訳ではないので、どこまで締め切りを延ばすかは思案のしどころです。
以上、「そらしゃあない」と思わず締め切りを延ばしてしまった7つの事例でした。
思うに本というものは、しょせん刊行しなくても世間様には一向に差し支えない物です。発刊した後には読者に少なからず影響を与え、時には誰かの人生を変えてしまうこともありますが、発刊しないことで誰かに影響が及ぶことはほとんどないでしょう。
水や鉄道など、止まったら即時人々の生活に影響を及ぼすインフラ産業と異なり、本は出さなくても誰も困らないのです。困るのは編集者だけです。そのため、「何が何でも締め切りを守ってください」と主張する正当性が見つからず、こんなふうに刊行時期をずるずる引き延ばしてしまう事例が多発するのですね。
ただ、それでも人は原稿を書きます。発刊した暁には、ほんのわずかでも読者の心を震わせることができるかもしれない――。そんな一握りの可能性を信じて、文章を生み出します。たとえ中国出張が入り、パソコンが壊れ、5人目の子どもが産まれても。
びよんびよんに延び、原形を留めなくなってからようやく実を結ぶ、そんな締め切りたちに思いを馳せながら筆を置きます。
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