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幸せな最期ってなんだろう【連載】松尾英里子のウラオモテ

松尾英里子 松尾英里子


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生あるものは、いつか死ぬ。生まれたその日から、死ぬ日に向かってのカウントダウンは始まっている。どんなふうに最期を迎えられたら幸せだろうか。夫もおそらく先にいなくなり、子どもたちもそれぞれの人生を歩んでいる中、私だったらどこで、どんな生活をしていられたら満足だろうか。35歳でそんなことを考えるなんてまだ早いよと言われそうだが、でももう35年も生きてしまったのだ。考えても無駄と言われるほど遠い未来の話ではない。

時たま、祖母が夢に出てくる。何もしゃべらないけれど、祖父の後ろで微笑んでいたり、タンスから着物を出して、白っぽい生地に黄や紫のものを、私にくれるという(祖母のタンスを開けたことはなく、着物を持っていたことすら知らなかったが、後日遺品を整理したら、実際によく似た着物が出てきたのには驚いた)。初彼岸で、こちらの世界に戻ってきていたのだろうか。

祖父が「花見をしたい」と言う。何かがしたいと希望を言うなんて、久しぶりだ。幸せな最期が何か、私にはまだよく分からないけれど、でも生きているうちに、誰かの希望をほんの少しでも叶えられる人でありたいと、遠く離れた空に思うのだった。

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