目の前で作家になっていった浅生鴨
さて、鴨さんというと、「元NHK広報担当・NHK PRツイッターの中の人」だったわけですが、
いまでも著作の帯に書かれがちなんですけどね。
鴨さんと僕のなれそめはですね、まだ2年にもならないくらい前、糸井重里さんが声をかけて僕たちを一箇所に集めまして、その後よく会うようになりまして。その経緯はこちらの、燃え殻さんの小説が刊行された時の記事に詳しいですね。
初めて会った頃は、この仲間の中で、古賀史健さんが多くの著作を大ヒットさせていたわけですが、それからたった2年足らずで、浅生鴨さん、燃え殻さんが本格的な作家としてメジャーな出版社から小説を出すという、僕はすごい時代の密度の目撃者だという実感があります。
そうですね。
今日は、鴨さんが取り組まれている文学、文芸というものをお伺いしながら、さらに、なぜ浅生鴨という、こういう人ができたのかという宇宙の起源に迫るような話を聞きたいと思います。
だいじょうぶですか。
こっちが言いたい。
まず、出版順は 前後しますが、『猫たちの色メガネ』。
これは最高でした。何度腹を抱えて笑ったかわかりません。超短編小説集、いわゆるショートショートなんですが、27篇も収められていて、最近、ショートショートをたくさん書ける人が少なくなったと思っていたんですが、いたんだ、それがこんなそばにいたんだと。
一篇ごとに、最低4本は書いて、そのうち3本は自分や編集者がボツにして書き進めたんですよね。だから、27篇載ってますが、120~30本は書いた結果ですね。
星新一のようなショートショートの原則どおりにきっちりしたものとか、筒井康隆さんみたいなスラップスティックな展開とか、安部公房みたいに幻想的な雰囲気とか。
いま名前が挙がった作家はもちろん、個人的には、アレホ・カルペンティエルとか、マリオ・バルガス・リョサとか・・・南米文学のニュアンスが出ちゃったかなと。
日常の描写が、途中で話が離陸して帰ってこないというか。
どっかある一線を越えたら話がよじれていくという。それは、小説の実質デビュー作の『エビくん』という短編がそもそもそうだったんですよ。
2014年を代表する一篇にいきなり選ばれて。今見ると佐伯一麦、島田雅彦、瀬戸内寂聴、藤沢周、西村賢太、平野啓一郎、川上未映子・・・そんな並びにいきなり「浅生鴨」って突然な凄さですね。
鴨さんといえば、作品だけじゃなくて、普段の会話でも途中で話が離陸して帰ってこないですよね。みんな「鴨さんが別室に行ってしまった」というんですけど。
僕がなにか一つのことを考えはじめている間に、みんなが別の話をする根気のなさが問題なんです。僕は悪くないんです。僕は同じ部屋にいるのにさっさとその部屋をみんなが出て行くのが問題なんです。いまは奈良県のことが気になって仕方ありません。
奈良県?
「せんとくん」っているじゃないですか。
せんとくん。
あれ、平城京建設1300年だから、千年の都で「せんとくん」でしょう?このあと8700年して、1万年経ったら「まんとくん」に改名するのかどうか気になって気になって。
すいません、小説『アグニオン』の話に行っていいですか。