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別れ話をされる女【連載】さえりの”きっと彼らはこんな事情”

さえり さえり


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夏が燃え上がる恋の季節だとしたら、冬は恋に冷静になってしまう時期なのだろうか。先日から、別れ話をしている場面にやけによく遭遇する。

街角で、それからカフェで。恋人たちは別れを決める。居酒屋で「5年付き合っている彼氏に振られた!!」と大騒ぎしている女の人も見かけた。カフェで仕事をしていると、隣にいた女の子が電話で別れ話を始めたこともあった。しかも3時間にわたって。思わず、人生における別れ話に費やす時間の総量はどのくらいなのだろう、費用対効果はいいのだろうか・・・などと考えてしまう。

 

そんな別れ見かけラッシュのせいもあり、渋谷まで地下鉄にのり、改札を出て、地上に上がるエスカレーター前で暗い二人組を見た瞬間もピンと来た。

 

(ああ、あれは別れ話だ)

 

そばに近寄らなくてもわかる。わたしだってそれなりに場数を踏んできたのだ。遠くからその空気を察知するだけで、過去の記憶が呼応しあうのかもしれない。

 

渋谷はその日も混雑していて、エスカレーターに乗るための行列ができていた。わたしはその後ろについて、彼らに徐々に接近する。

 

徐々に女の方は泣いていて、男はひどく不機嫌そうにしているのがわかった。彼女はダッフルコートに短いスカートをあわせていて、すうすうと寒そうにしている。うなだれているせいか、とても小さく見えた。男はイライラしているようで、首が座っていないのかしらと思うほど、目線をそらしては首をぐらんぐらんとさせて、圧迫感を与えていた。

 

「〜〜〜って言ってんだろ」

「でもだからって、別れるなんてやだ」

 

概ねそんな感じだった。

彼らの横を通り過ぎるころ、さっきよりも一段と大きくなった彼女の声が耳に届いた。

 

「ねえ、大丈夫! わたしぜんぜん辛くないから!!!」

 

・・・聞くだけで泣きそうになってしまった。そんなに大きな声で、辛くない! なんて主張する人はいない。彼女は、紛れもなく辛いのだ。同じような言葉を言ったことはないが、もしかして前世で言ったんじゃないかと思うほど、彼女の辛い気持ちが乗り移って喉元まで迫ってくる。

 

きっと彼らの事情はこうだ。

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