その日も同じように、「はやく~はやく~」の連続を経て、ようやく幼稚園に息子を送り届けた。家族の準備にばかり時間をとられ、結局私はノーメイクにマスク姿。綺麗にメイクして送りにくる他のママたちを見ると、自分の余裕のなさがこの外見にすべて現れている気がして恥ずかしくなった。
あーあ、きっと私は、これまでの息子のしつけに失敗してしまったんだ。きっとみんな今日も怒鳴らずに、この朝の時間を穏やかに過ごしてきたに違いない。自己嫌悪のループに突入しそうになる。
そんなときだった。「おはよー」と同じクラスのママ友が声をかけてくれた。歩く姿がいつも美しく、背もすらっとしていて、なおかつ気さくな彼女のことを、私は勝手にタカラジェンヌと呼んでいる。(真偽のほどは知らない)「おはよ~。今日も朝から怒鳴っちゃってさ~」気付けば私はそんなことを口走っていた。時候の挨拶もなく、いきなり愚痴をこぼされた彼女はびっくりしたに違いない。でも、さすがはアドリブ百戦錬磨のタカラジェンヌである(あくまでも私の想像だけど)。「ああ、そういうの、習慣づけちゃうとラクだよ~」と、私の剛速球な質問を即座に打ち返してくれた。
習慣づける?? どういうことだろうか。藁にもすがる思いで、「なにそれ! どうやるの!?」と聞く私に、彼女は教えてくれた。
人は何事も、習慣にしてしまえば辛くない。脱いだ靴を揃えるのも、毎日青汁を飲むのも、それが日常になってしまえば何も大変じゃない。トイレに行ったから手を洗う、というのが自然な流れであるように、習慣にさえなってしまえばそこに何の疑問も感じなくなる。むしろ、トイレの後に手を洗わないことのほうが、違和感を覚え始める。イチロー選手が毎日カレーを食べてもつらいと思ったことはない、というのと同じだ(今はカレーじゃないそうだが)。
なるほど。そりゃそうだな。でも、問題なのは、習慣にするまで。どうやれば、習慣になるのか。
実は、育児のコーチング資格を持っているという彼女は(その時初めて教えてくれた)、「3週間頑張ってみて!」と言った。親子で一緒に、習慣にしたいことを書きだす。それを、毎日できたか、チェックをする。そして、3週間頑張る。