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彼には彼の理由がある【連載】松尾英里子のウラオモテ

松尾英里子 松尾英里子


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なぜあんなに気の入っていない走りをしたのか。緊張した? 本番の勢いに呑まれた? 順位はどうでもいいのだ。なぜ全力を出し切らずにポテポテ走ったのか、私はどうにも納得がいかなくて、ついに夕ご飯の時間、息子に質問してみた。

今日はかけっこ、たのしかった?

たのしかったよ。

そっか。でも、もしかしたらもっと早く走れたんじゃない?

う~ん(質問がよくわかっていない感じ。)

もっと頑張ったら、1番になれたかもしれないのに。悔しくないの?

うん。だって、みんなだいすきだから、みんながかってうれしくなれば、〇〇(息子)もうれしいから、くやしくないよ。

 

私、ぽかーん。

夫、苦笑。

 

え、徒競走って、誰しも自分が一番になろうと頑張るものなんじゃないの!? 完全にそういうオトナな考えしか持ち合わせていない私は、呆気にとられてしまった。みんなが勝って嬉しくなればそれでいい、って!! なにそれ!! いい人すぎるだろっ!!

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