ヒロイズムへの回収
映画は、上で書いたように、徹底的に兵士、パイロット、民間人がそれぞれ生き延びる努力をしたり、自分がすべきことをしたりと個人的な視点で語られますが、終盤に向けて一気にヒロイズムが前に出てきます。
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しかしヒロイズムを盛り上げるなら、民間人の大船団が来そうなものですが、そこはCGを使わないノーラン監督。漁船やヨットが感動的な音楽に乗せて・・・5隻ぐらいきます。
えっ、誰もが海を埋め尽くす民間船の映像を期待したところにこの肩透かしぶり。実際は何百隻も来たそうですから。
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また、燃料切れのスピットファイアがドイツ機を撃墜するラストとか吹き出してしまいました。んなわけないだろう。
そしてそのあとわざわざドイツ軍陣地に降りて捕虜になり、スピットファイアを焼くトム・ハーディもちょっとわかりません。
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ちなみに、スティーブ・マックイーン主演、ジョン・スタージェス監督の名作「大脱走」は、スピットファイアを撃墜された英軍パイロットがナチスの収容所から脱走する話です。トム・ハーディはあのあとスティーブ・マックイーンになったんじゃないかと勝手に想像すると、面白い。
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いいものもある、だけど悪いものもある。
上で述べたように、徹底的に意味性を排除したなら、別の方向の傑作になったのに、と残念に思うところではあるのですが。しかし、ひょっとすると、このダンケルクのダイナモ作戦は、イギリス人のノーラン監督にとっては、我々日本人が「元寇を撃退した」とか「日露戦争を日本海海戦で勝利した」とか、「その国の人なら経緯と結末を誰でも知っている」ものだから、いろんなことをミニマリスム的に描いても、それぞれが脳内で補完できる共通の物語なのかもしれません。
イギリスにはくじけずあきらめず、義務を遂行して助け合い、物事を成し遂げるという「ダンケルク・スピリット」という言葉もこのとき生まれました。
また、のちのノルマンディー上陸作戦につながる連合軍の勝利も、このとき30万人以上の命を助けたことから繋がっていきます。
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ラストの
多くの人にとっては、戦争は降って湧いた災厄でしょう。自分の意思で戦争を起こし、戦地に赴く人などほとんどいません。「ダンケルク」はこの救出劇に居合わせた、いや、戦争に居合わせたすべての人間の群像劇かもしれません。
逃げ惑う、けれども生き抜く人、民間人なのに崇高な義務を果たそうとする人、その技能で戦闘行為に勝利する人、その職務をまっとうする士官、兵士に毛布を差し出す盲目の老人、新聞の記事でうかがい知れる政治家の強い意思、パンにジャムを塗って差し出す看護婦・・・
あれ? ・・・テーマパークのライドみたいな映画で、前評判よりしょぼいな、なんて感じていた自分の中が、いま思い出すたび少しづつ変わって来ましたよ。
これは、いい映画だ。
いいとこも、あれ? なところもある「ダンケルク」ですが、僕としては、ぜひ観ておいてほしいと思う1本です。それも、IMAXで。それも、大阪のエキスポシティのIMAX次世代レーザーで。大阪にお越しの節はぜひご連絡ください。その日、ヒマなら観た後「ダンケルク」の話しましょうよ。
ちなみに「いいものもある、だけど悪いものもある」っていうのは、これなんです。
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僕、30年以上前にこれを聴いて以来、「評論」って要するにこういうものだという事を忘れたことはありません。
そんな映画の話、また来月、エンタメ新党でお会いしましょう。
何観て欲しいですか? ちょっとツイッターで募集しましょうか。ハッシュタグはシンプルに
#田中泰延のエンタメ新党で書いて欲しい公開中のもしくは公開直前の新作映画
です。
あ、10月27日の初日に観に行って、11月に記事がアップされる映画は決まっています。
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なので、9月から10月初旬にかけて観て、10月第3週に記事掲載される映画を募集します。映画のタイトルと、オススメ理由など書いてくださると喜びます。
なんども言いますがハッシュタグはシンプルですよ。
#田中泰延のエンタメ新党で書いて欲しい公開中のもしくは公開直前の新作映画
では、来月もここでお会いしましょう。いやあ、映画って本当にいいものもある、だけど悪いものも文字数