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ひいおじいちゃんと暮らす【連載】松尾英里子のウラオモテ

松尾英里子 松尾英里子


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さて。そんな実家に、最近、変化があった。私の祖父が時々滞在するようになったのだ。健康そのもので88歳を迎えた祖父だが、さすがに耳が遠くなったり腰が痛くなったり目が見えなくなってきたりと、ぼちぼち体に不調が出てきている。そのため、通院の送り迎えのできる私の母のところに来ている、というわけである。
 

ある日のこと。「こんにちは~」と子どもたちと私とで、元気に実家に飛び込んだ。しかし、急ブレーキをかけた車のように、玄関先で子どもたちの足が止まる。そう、そこに突如として「ひいおじいちゃん」が現れたのだ。4歳の息子にとっては記憶にあるような、ないような状態、2歳の娘にとっては、ほぼ、はじめましてな状態なのだろう(実際は、それなりに会っているが、たぶん2歳児はそこまでの記憶力はない)。
 

まあ無理もない。我が家は父・母・子2人という、生命保険のパンフレットの例に出てきそうな、超典型的な核家族。
 

高齢者とのふれあいは、日常的にはほとんどない。「お~元気か~? 大きくなったな~」と言われても、恥ずかしいのか、2人とも返事もせずにごにょごにょ言っている。「ひいおじいちゃんだよ。ママのじいじだよ。」と説明すると、関係性に納得したのか、息子は小さな声で「こんちは~」と言ったが、娘はフリーズ。2人とも、じいじよりもさらに年配の「ひいおじいちゃん」とどう接したらいいのか、戸惑っているように見えた。
 

しばらく家でまったりしていたが、一向に子どもたちから祖父に近づく気配はない。そこで、「将棋しよーって言ってみたら? ママは昔、ひいおじいちゃんに将棋を教えてもらったんだよ。ひいおじいちゃん、強いよ」と、ひとまず息子にけしかけてみた。すると、目下将棋にドはまりしていて対局相手の欲しい息子は、将棋盤を持ってひいおじいちゃんのところに行った。別の部屋から、私もその様子を見ていると、なかなか興味深い光景が広がっていた。
 

 ひいおじいちゃんは、ここで桂馬を使えば?

 ん?

 桂馬つかったほうがいい。

 よく聞こえない!

 桂馬なんだよ~。

 ひいおじいちゃんはね、耳が悪いから、
 ちかくで話してくれるかい?

 (耳元近くに行って)桂馬つかったら~?

 ああ、そうか! そうだな。その通りだ

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