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100円玉で磨く、子どもの経済感覚【連載】松尾英里子のウラオモテ

松尾英里子 松尾英里子


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そうして通い始めたスイミングスクール。しかし、顔を水につけるのが苦手だった息子は、初回はプールサイドで泣きべそをかき、2回目は「行きたくない」と、家を出る前から駄々をこねた。やると決めたらやり抜いてほしい。苦手だからと、簡単に逃げないでほしい、それに、高い月謝を払っているのだ。休ませるわけにはいかない。そんな母親の気持ちを気にするわけもなく、息子はいくら話して聞かせても、「行かない、行きたくない」の一点張りである。

あ。私はあることを思いついた。そして、集められる限りの100玉を集めた。家中探したら2100円分あった。そして、そこから3つ手に取る。

私「はい、300円あります。100円3つ、300円で買えるものはなんでしょうか」

息子「うーんとね、ぎゅうにゅう」

私「そうだ、牛乳買えるねえ。あとね、大好きなグミも、2袋くらい買えるんだよ」

息子「うん」

私「では質問です。プールに通うのに、100円はいくつ必要でしょうか?」

息子は目の前にある100円玉を8つ集めた。

息子「これくらいかな?」

私「うーん、もっとだねえ」

息子「じゃあ、これくらいかなあ?」

さらに5つ、100円玉を加えて、息子の目の前には1300円が集まった。

私「いや~、もっともっとなんだなあ。正解は・・・・・・100個!!」

息子は、黙っていた。やや長い沈黙だった。そして、急に立ち上がり「ママ・・・がんばったら・・・アイスたべたい・・・」と小さな声で言いながら、スイミングバッグを抱えて玄関に歩き始めた。

おつかいによって、100円玉の意味を知った息子。そして「100円玉でいくつ」と数えることで、その他のものの価値をわかってきた息子。プールに行くよう勧めるには、ショック療法的でやや適切な誘い方ではなかったのかもしれないが、結果的に息子は行く気になった。多用はしたくないが、今回はこれでよしとしようと思う。

ちなみに、その後の息子は、スイミングスクールがすっかり楽しくなったようだ。一週間のうち4日も通ったりと、すっかり生活の一部になっている。私はすっかり息子の運転手状態。習い事は、子どもも大変、親も大変である。

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