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男同士の交換日記【連載】松尾英里子のウラオモテ

松尾英里子 松尾英里子


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まだ予定を立てていないというのに、幼稚園は終業式を迎え、9月初旬までの長い長い夏休みが始まってしまった。これまで毎日のようにしてきた送り迎えがないし、お弁当作りも、この休み期間はひとまずお休み。そういう意味ではラクな部分ももちろんあるのだが、やはり四六時中一緒にいるというのは、お互いにとっていいような悪いようなだなあ、と早くも思ったりもしている。
 

我が家の場合、夫の帰宅は毎日遅い。帰ってくるのは子どもが寝ている時間だし、下手したら私も寝ている。平日、家族全員が顔を合わせるのは毎日の朝食の時くらいで、せいぜい30分である。たまに早く帰ってきたとしても、夜9時。夫が夕食を食べている間に私は子どもたちを寝かしつけてしまうから、結局、彼らは平日、父親と触れ合う時間がほとんどない。
 

夏休み。こちらは、子どもたちの起きている15時間くらいをべったりと共に過ごす。夫は1日30分。たった1日で30倍もの違いがある。そうなっていくと、私と子どもたちの間では常識になっているようなことや、大体のサイクルも、夫はわからない。いやもうすでにここまでの日々の積み重ねから、子どもの現状認識は、私と夫とで随分違っているはずだ。今だって夫が(私から見れば必要以上に)いろいろ息子に世話を焼いてやったり、いまだに食卓に、息子用のスプーンとフォークを用意したり(息子はそろそろ箸だけで食事ができる年ごろなのに)するのは、愛情の現れである一方、夫が十分に現状認識できていないせいではないか、と私は思っている。仕事だから仕方ない、と思う気持ちもあるが、彼らの親としての役割も期待してしまうのが、母であり、妻である。
 

成長著しいこの夏休み。「夫のイメージする息子像」と「今現在の息子」と、その差を縮めたい。少なくとも、その差が広がってしまうのは、食い止めたい。
 

ふと思った。父と息子の交換日記なんてどうだろう。相変わらず、「ほ=1+ま」「た=T+こ」みたいななかなか独創的な字を書く息子だが、それなりに解読できるレベルにはなっている。私がああだこうだと1日の出来事を夫にしゃべるよりも、たとえノートを介してであっても子どもと夫の直接的コミュニケーションをとることは、彼らにとって良いのではないか。ついでに、字の練習にもなる。一石二鳥だ。
 

夫に提案すると「なんで交換日記?」と不思議そうな顔をしながらも、意図を説明すると承諾してくれた。そうして、まずは夫が息子に手紙を書く形で、男同士の交換日記は始まった。
 

ちなみに、息子が書く内容には、私は一切口を出さない。ただし、書いているのを隣で見ながら、あまりにひどい字は書き直させたり、苦手な文字は教えたりしている。また、書き終わったあとに一度音読させ、濁点がないことや、字が抜けていることを自分で気づかせようとしてみている。
 

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