昨年まで羽生くんのスケートに酔いしれ、先月まで将棋の藤井四段を追っかけて将棋会館の前で記念撮影していたオバハンが、
昨日のワイドショーで「恐怖！」「死者が！」「見つけたら通報！」とヒアリ、ヒアリ、ヒアリと刷り込まれ、
今はヒアリを抹殺するための殺虫剤を求めて、それこそ軍隊アリのようにホームセンターに突撃し、庭や公園にいるヒアリ以外の善良な虫様を抹殺している。
まさしく地獄絵図。風の谷のナウシカがみたら泣くと思う。
すべてワイドショーのせいである。放送したいもの、伝えなければならないものを作るのではなく、ウケるものならなんでもいいというスタンスで番組をつくっているからである。
善良な市民を焚き付けているだけだ。最近の世の中は、たとえば国会や選挙も、こんなふうで、僕はこの国の未来が心配なのである。
もっと、人の意見に踊らされるだけではなく、自分の目で見、頭で考えていくべきではないか。
リアルでもテレビでもネットでも、いろいろな人が好き勝手に言ってくる現代、案外、すべての言葉をいったんはクソリプとしてスルーしていくことも必要なのではないか。
そんなことを、妻が真夜中に長めの動画をアップしないか心配しながら、道行く薄毛男を「このハゲ―！」と心の中で嘲笑いながら、ヒアリ抹殺のための殺虫剤を棚に収納しながら、考えている。
鋼鉄の意思をお持ちである妻もワイドショーに流されており「ヒアリだって無職よりしっかりと仕事をしている人間を選んで刺します」などと極めて非人道的な発言を繰り返している。
そんな地の底でアリのようにはいずりまわっている僕らを、かつて韓流スターとしてオバハンからモテはやされていたヨン様が雲の上から人知れず微笑んでいる、素晴らしくも、クソみたいな世界がここだ。
【過去5回の「神様がボクを無職にした」はこちら】
・僕が無職なのは遺伝子のせい
・働かない豚はただの豚だ
・無職の人生は紙切れひとつで救えるのです
・東アジアの片隅で哀を叫んだ無職
・ソンタクとかいいから仕事をくれ
