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「結婚する気ある?」【連載】さえりの”きっと彼らはこんな事情”

さえり さえり


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彼の名前はモトムラ。あまり特徴のない男で、小学生の頃からあだ名もなくずっと「モトムラ」と呼ばれている。モトムラの出身は神奈川、仕事は営業、特技は舌を4つに折れること、趣味は特になし、強いて言えば鍛えたわけでもないのに握力が強く、ビンを開ける時に役に立つ。こういう男に違いない。

(ちなみにこの連載を読んだことのない人のために言うが、ここから記事の最後まで、書いてあることとはすべてわたしの勝手な想像であり妄想でありモトムラないしはあのスーツの男の事実とは何の関係もないものだ。うんちくとうんちくんくらい関係がない。この例えはわたしがよくお仕事をしている47歳男性がよく使う例であり、その男性とわたしはすべての意味において全く関係がない。諸々ご了承ください)

モトムラはずっと悩んでいた。6年付き合ってきた彼女との関係性をどうするかについてだ。

6年前に友人に半ば強引に誘われて参加した合コンで、彼女のほうがモトムラを気に入った。友人として3ヶ月に1回程度のペースでご飯に行き、最終的に彼女のほうから半ば強引にキスをして付き合うことになった。

キスをされたときでさえモトムラはパッとしなかった。

「え?」と気の抜けた声を出し、彼女が必死の思いで「好きだから」と告げたにもかかわらず、「あぁ」と返事をしたくらいだ。その時のことは今でも二人の会話のネタとしてよく取り上げられる。「あぁ、は、ないでしょ、あぁ、は!」と彼女のヤスエは言うし、ヤスエの友達のトモコも「あぁ、はないわ〜」と言うし、トモコの友達のミチコも「あぁ、って・・・」と失笑する。

モトムラは本当は言えずにいる。あのとき、本当はヤスエに気がなかったことを。

じゃあ何で付き合ったのか? と聞かれたら、ヤスエに悪いと思ったからなのだ。キスまでしたのに、付き合わないのもどうかな、と思ったのだ。

こういう男は本当に何事も「どっちでもいい」のだ。モトムラもいつもそうだ。たらこパスタを頼んだはずがカルボナーラが出てきたときでさえ、誰にも何も言わずに食べ始めるし、2,500円だと思った服が、25,000円だった時も払ってしまった。タイにいけば必要がなくともトゥクトゥクに乗ってしまうし、ヨーロッパにいけば道端でサングラスを売りつけられてしまう。「どっちでもいい」のだ。言えない、こだわりがない、幸せへの感度が低すぎる。・・・・・・そういうタイプの男なのだ、多分。

結局その後、6年間もヤスエと付き合ってきて、今ではヤスエのことを大切に思ってはいる。けれど心が激しく動くようなことはないのもまた事実だ。

モトムラの心を揺さぶったのは、高校時代の同級生・アキエだけなのだ。登場人物がまた増えてきた上に、さっきから断言口調で文章を書いているがゆえにこの記事が何の記事だか忘れてしまった人がいるかもしれないが、これはすべて妄想であり、つまりなんの学びもない記事である。そこのところを思い出してもらって、続ける。

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