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その夜父は絶望して満天の星空を見上げた【連載】嫁公認コラム

5歳【嫁公認アカウント】 5歳【嫁公認アカウント】


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ちょっと前、父に「こんな感じで仕事が大変なんだ」と話すと、父が人生で一番仕事が忙しかった時の事を話してくれた。

その頃、父は自営業で屋根板金職人として働いていた、建築現場での仕事だ。建築バブル期が到来していた時期で、とにかく仕事がバンバンと入ってきて父はそれらの仕事を全部受けていた。僕もまだ小さくて、下には三人の兄弟がいた。父も頑張らなくてはいけない時期だったのだと思う。

そして仕事が最高潮に忙しい時に、父は山奥の別荘の仕事をした。夕方になっても一向に終わらず、暗くなってもヘッドライトをつけて屋根の上で仕事を続けた。次の日には、また別の現場に絶対に行かなくてはいけなかった(次の現場は2日後には足場が外されてしまう、建築現場で働く職人にとって足場が外される事は死を意味する)ので、なんとしてもその日に別荘の仕事を終わらせなければいけなかったのだ。

時計は24時を回り、父は途方に暮れていた。はっきり言ってその時間にヘッドライトを装備して屋根をいている職人は、全国何処を探してもいないと思う。本当に危機的な状況だったのだと思う。

絶望していた父がふと空を見上げたら、そこにはキラキラと輝く満天の星空が広がっていた。その夜空を見上げながら父は、「きっと今が一番辛い時で、これ以上はないんだろうな」と思ったという。実際この時が仕事の忙しい時のてっぺんで、その後何回か大変な時はあったけれど、あの山奥での満天の星空の夜より辛い時はなかったそうです。

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