彼は僕の預かり知らぬところで、教員試験を受けていたのだ。おかしい。僕と同じように人類滅亡を信じていたはずなのに、なぜだ。あの人類滅亡の夏が目の前にありながら教員試験を受けて先生になるなんて、とんだ裏切り者だ。エイちゃんはアホすぎたので、人類滅亡自体を忘れてしまったのではないか、そう冷静になった僕は考えている。
ノストラダムスにせよ、エイちゃんにせよ、人を巻き込むアホはいつの時代も迷惑なものなのだ。
ふと、気付いてしまう。ノストラダムスの大予言は当たっていたのだと。あの時代を生きた人間には、それぞれのノストラダムスがいる。それぞれの人類滅亡の予言がある。僕は思う。人類滅亡の予言はタイミングも規模も外れてしまったけれども、僕にかぎっては当たっていたのだ。予言は信じる人にだけ起こりうる。事実、心のどこかでまだノストラダムスの予言を信じている僕は、今、アルバイトで日銭を稼ぎながら確実に滅亡へと向かっているんだ。
【過去3回の「神様がボクを無職にした」はこちら】
妻に言われた一言で愛は死んだ
無職は冷たい玉座に座る
無職と正義
