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ナルシストを極めれば恋人など不要なのでは?

上田啓太 上田啓太


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求婚

とうとう自分と結婚する日がやって来る。鏡に映る自分に言うのである。

「毎朝、俺の味噌汁を作ってくれないか?」

むろん、こんなもんは単なる自炊である。しかし鏡にむかって静かにうなずくのである。俺はずっと俺と結婚したいと思っていた。しかし言い出せなかった。だから俺が俺に俺と結婚したいと言ってくれたことが俺は本当に嬉しい。そう言うと、俺は俺のために必死で働いて買った指輪を俺の薬指に通してあげるのである。

「ぴったりだ」

当たり前だ。

両親

そして俺は俺といっしょに俺の両親のもとに結婚の挨拶に行くのである。

「お父さんお母さん、息子さんを僕にください!」

両親の反応は「おまえが息子じゃん」である。「おまえがおまえをほしがってるじゃん」である。「しばらく見ないうちに息子が発狂してるじゃん」である。しかしこちらは本気なのである。今にも土下座しそうな勢いなのである。畳に両手を付けているのである。父親を「お義父さん」と呼んでいるのである。

かくして両親の脳裏をよぎるのは「子育て失敗」の文字なんだが、もちろんナルシストが極まっているので他人の意見など耳に入らない。両親の困惑を押し切って自分との結婚を決めるのである。

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