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無職と正義【連載】神様がボクを無職にした

フミコフミオ フミコフミオ


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3日目。戦いに疲れ、ゴミ集積場を見ないふりをして昼スナックでビーズやユーミンを歌い続けた。スナックから戻り、ゴミ集積場を見て、驚愕。そこには「分別されていないので持っていくことが出来ません」という意味の貼り紙がなされた未分別ゴミの袋が放置されてあった。カラスやホームレスが突いたのだろうね、ところどころ破れて穴があき、異臭が漏れ出していた。

僕が正義を怠けたばかりにプチ公害。その事実に僕は打ちのめされた。テロリストは倒さねばならぬ。僕はテロリストをとらえるため、早朝からゴミ集積場をスーツ姿で監視・警戒した。百戦錬磨のテロリストは嘲笑うように姿を現さない。僕は無職。時間と暇だけはいくらでもあった。ついにテロリストは現れなくなった。正義は勝ったのだ。僕は理解した。神様が僕を無職にしたのは、ゴミを守るための戦士にするためだったのだと。

誰も知らないひとりぼっちのテロ戦争を終えてからしばらくして、マンションのポストに管理組合からの一枚のビラが投かんされていた。そこには

先日、住民の方から外部から来たスーツ姿の男性が未分別のゴミを放置して去っていくという通報がありました。警戒してください。

 
というメッセージが無機質な明朝体で印刷してあった。毎朝早くからスーツ姿でゴミ集積場をうろうろしている男性とは・・・認めたくないが十中八九僕のことだろう。神様。お答えください。正義のために戦ったのにこんな仕打ちを受けるのは、僕が無職だからなのでしょうか。

僕が正義の戦いを放棄した途端、未分別ゴミはあらわれなくなった。その事実が何を証明するのか。そして人は何を信じるのか。人知れず戦いに破れ、人知れず犯人の汚名をかぶり、僕は、ひとり、生きていく。

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