アキラ有利か? ツトム逆転か?
ツトムくんのことも忘れてはいけない。私を見つめてクールに言ってくる。
「ねえ・・・、ぼくの時間割は、きみで埋まってしまったよ?」
ううむ、という感じである。どうも響いてこない。私はツトムくんに厳しすぎるだろうか。しかしツトムくんは理屈が先行している気がするのだ。いまいちウソくさい。「時間割がきみで埋まった」と言いつつも、普通に一時間目の算数の予習はしてる気がする。あれ、一時間目、私じゃないんだ? そんなイヤミを言いたくなる。
ツトムくんは、分度器と三角定規で恋愛に取り組もうとしている印象だ。それならば、ノリとガッツだけでなんとかするアキラくんのほうが、私は好きである。
「おれっ、おまえのためなら、このチョーク食えるぜっ!」
もっとも、これはさすがにバカすぎて減点である。アキラくんはこういうところがある。たまに、本当に勢いだけで口説いてくるのである。チョークを食べてもおなかを壊すだけだし、やめてほしい。第一、どうしてチョークを食べることが私のためになるのか。そんな求愛行動は昆虫だってやらないだろう。
それならば、ツトムくんが細い指先でチョークを持ち、カッカッカと黒板に文字を書いていく姿のほうが、私はしびれる。知的なツトムくんの秘めたるパッション。これを見てみたい。