歩くカメラ
今は誰もがスマホで写真を簡単に撮れてしまう時代。ネットで毎日写真を大量に見ているはずなのに、その日に見た写真で心動かされた写真が一枚でも思い出せるでしょうか。極まれに物凄いものもありますが、その人は同じように続けてすごい写真を撮り続けられるか、と言われればまず無理でしょう。素人ゴルファーがまぐれでホールインワンするようなもの。そこがプロのフォトグラファーとの違いなのです。
みんなが知っている有名な巨匠フォトグラファーや、僕の好きな優しい写真を撮るフォトグラファーは、呼吸をするように写真を撮ります。多分、生きることが撮ること、になっていたんです。カラダがカメラになっちゃって、目から光が入ってきて、瞬きでシャッターを切って、脳でネガが現像されて、心で印画紙に現像して、瞬間に大体の仕上がりがすでにカラダのなかにバサッとたまっている。そんなクレイジーな人と仕事をしてみると、自分が写真を撮ることがなんだか馬鹿馬鹿しく思えてくるのです。絶対敵うわけがないと。
光を見るか、影を愛するか
話は変わってしまいますが、撮影という文字をよく見てみると、影を撮るという表記をしています。これは写真の技術が発明されて、しばらくは白黒写真だったという名残なのでしょう。英語では「ライティング」で光をつくるという表現をしますけど、光に着目するのではなく影を採集するっていう感性が日本的で好きなんですよね。
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