むかしむかし、あるところに、いいか悪いかは別として、とても可愛いC1の女の子がいました。ある日、女の子のおばあさんが、赤いビロードのマテリアルで赤い「ずきん」をアウトプットしてくれました。 フィッティングの結果、赤い「ずきん」が女の子にとても良く似合うということで『赤ずきん』としてシェアされるようになりました。
ある朝一のこと、赤ずきんのお母さんは、こうナレーションしました。
「赤ずきんや、おばあさんが急に有休を取ってしまったの。おばあさんは明日競合プレだから千疋屋でメロンでも買ってお見舞いに行ってきなさい。広告業界を志望しているなら勉強になると思うから」
別件バウアーで同行できないお母さんは続けます。
「一点ほどいい? 途中で道草という訴求に引っかかってはいけません。それから、広告マンというオオカミに用心するのですよ。広告マンはどんな悪い事をするかわからないから、話しかけられたり、CMに出してやると言われても知らん顔をしなさい」
「はい、大丈夫と思います!!」
赤ずきんは、お母さんを安心させるように「Just do it!」 と叫びながら出かけて行きました。
その日は、とてもピーカンで、赤ずきんがニコパチで歩いていると突然、スーツを着た広告マンが現れました。
「今度オレ、赤い犬のCMを作るんだけど、赤い「ずきん」が似合うデルモも探してて・・」
広告マンはシャツのボタンを3つも開け、いやらしい笑顔を浮かべて話しかけて来ました。 赤ずきんは、お母さんのセリフを思い出しましたが、広告好きの赤ずきんはニコニコしている業界人がとても悪い動物には思えません。
「こんにちは、広告マンさん」
「オオカミだよ」
「決定ですか?」
「決定です」
「了解です」
広告マンはボタンをもう1つ開けながら続けます。
「赤ずきんちゃん、どこへ行くんだい? スーパーファクトリーかい?」
「いいえ、スーパーファクトリーでも目黒109でもないの。おばあさんのおうちよ。おばあさんが有休中だから、おばあさんちにマッカーを呼んでコンテ作業するの」
「それはいいコミュニケーションデザインだね。おや? その紙袋の中に入ってるのは絵コンテかな?」
「ケーキとブドウ酒よ。早く良くなるように持って来たの」
「なるほどですね。それでどこだい? おばあさんの家は?」
「森のずっと向こう。タクシーで3メーターくらいかな・・」
広告マンは考えました。 3メーターといえば新橋から御成門までの距離。おばあさんを食べるためには赤ずきんを足止めしておかなくては・・。
「赤ずきんちゃん。おばあさんの家に行く前に、OB訪問してきなよ。赤い「ずきん」だけでアピールする時代じゃないし、赤ずきんちゃんの自己PRと志望動機、同期を紹介してあげるからブラッシュアップしてきなよ」
赤ずきんは、広告マンの言う通りだと思いました。自己PRを掘り下げられれば、広告業界に近づくに違いありません。
「そうね、広告マンさん、あなたの言う通りだわ。あたし、OB訪問に行ってくる」
赤ずきんは広告マンからタクチケをもらって、逆方向のタクシーに乗り込みました。
さて、赤ずきんと別れた広告マンは、おばあさんの家に直行しました。
トントン
「オイシックスですか?」
おばあさんの声がします。
オオカミは、女の子のような声でこたえます。
「赤ずきんよ。ケーキとブドウ酒を持って来たの。オイシックスの人は道に迷っていたわ」
「おや、赤ずきんかい。さあ、セコムを解除するから入っておくれ。おばあさんはテンションがダダ下がりでベットから起きられないからね」
「それじゃあ、無礼講ということで」
そう言いながら広告マンはポータルから家に入り、ベッドに寝ているおばあさんに飛びかかりました。
「ぎゃ」
おばあさんは若い頃を思い出して、変な声を出しました。
しかし、顔がオオカミだと分かると怖さのあまり気を失ってしまいました。
広告マンは、おばあさんの衣装とずきんを取ると、そのままおばあさんをパックンチョしてしまいました。そして、おばあさんの衣装とずきんをつけてベッドのインナーへ入りました。
その頃、赤ずきんは、ロクに話も聞かず飲みに誘ってくるだけの別の広告マンを振り切り、おばあさんの家へと急ぎました。 おばあさんの家に行ってみると、セコムが解除されていたので不思議に思いました。
「どうしたんだろう? おばあさん“セコムしてますか?”が口癖なのに・・」
赤ずきんが家のインナーに入ると、部屋の奥のベッドでおばあさんが寝ています。
「どーもです! おばあさん」
赤ずきんが大きな声で挨拶しましたがリプライがありません。
ベッドに近づいた所で、赤ずきんは、おばあさんのフォルムがデフォルメされていることに気がつきます。 赤ずきんは、おばあさんに質疑応答してみました。
「おばあさん、おばあさんの耳は、ずいぶんと大きいのね」
「お前のナレーションが、よく入ってくるようにね」
「それに目が大きくて、グローしてる。業界人みたいで何だか怖いわ」
「怖がることはないよ。シズルのあるお前を、よく見るためだから」
「それに、おばあさんの手がスケールしていること。おばあさんの手はこんなだったかしら?」
「そうだよ。スケールしないと、お前をグリップすることが出来ないもの」
「それから一番のアテンションが、そのお口。あんまり大きいので小道具かと思っちゃった」
「そうとも。お口が大きくなくては、お前を・・・」
「・・・お前を?」
「食べられないからさ!」
広告マンはそうナレーションすると、赤ずきんをエイヤで飲み込んでしまいました。
広告マンはお腹が大きくなったので仮眠しました。
しばらくして、いつもこの森で狩りをしている猟師が通りかかりました。
「おや? おばあさんのいびきのメロディがいつもと違うな」
猟師が家に入ると広告マンが寝ていました。
鉄砲で殺してしまおうと思いましたが、そこは「think different」、食べられたおばあさんが、お腹の中で「日清SURVIVE」しているかもしれません。
大きなハサミで広告マンのお腹をジョキジョキ切ってみました。
するとまず、赤いずきんが見え、女の子がCMの演出のように飛び出してきました。
「ああ、ビックリした! 広告マンのお腹の中って、ライティングされていないんですもの」
続いておばあさんが出てきました。そして、赤ずきんにナレーションしました。
「庭にある石をたくさん持って来ておくれ。この羽賀研二のような希代の悪をこらしめてやらないとね」
おばあさんは沢山の石を広告マンのお腹に詰め込んで、お腹を針とテグスで縫い合わせました。
しばらくして、やっと目を覚ました広告マンは喉が渇いて近くの川に行きました。
「お腹が重い。少し食べ過ぎたかな?」
広告マンが川の水を飲もうとしたとたん、お腹の石の重さにバランスを崩して、そのまま川にドボンと落ちてしまいました。
悪い業界人がいなくなって、マスはひと安心。
「ああ、怖かった。これからは二度と新橋方面には立ち寄らないわ」
赤ずきんは、そう自分にモノローグし、幸せに暮らしましたとさ。
おしまい