成長の尻馬に乗る
「成長の尻馬」、それは今では国内ではなく、という視点をもたれたわけですね。で、「海外で起業すること」に力点を移して全活動されているわけですが、アジアはこれからまだ伸びる。尻馬に乗れる、ということなんですね?
僕が転がる石のごとく、80年代の後半からライブドアショックまでやってきたなかで、一番感じたことは、成長の波に乗ることの大切さ。衰退、あるいは停滞してる産業に身を置くと、どんだけ優秀な人もしんどい、と。逆に伸びてるところにいくと、引っ張ってもらえるよ、と。
僕がシンガポールに移住した2008年あたりから、東南アジア各国はどこも激しい成長カーブにあり、まだ10年は行けるので、そんな中で「成長の尻馬にのっていこう」と煽ってます。
なるほど。
ライブドアショックのときの気づきは、戦後からだらだら続いてた成長期の終わりの始まり。そして、アジアの勃興だったわけです。しかも、それらの気づきの種は、アメリカでたいへん評価され始めていた中国人にあったんですわ。
それが「ウミガメ」という言葉なんですね。中国から一度海外へ出て、事業家として故郷に錦を飾ったジャック・マーさんやロビン・リーさんとか。
北京標準語では ハイグイと発音されている海亀。海帰と書いても同じ音だそうです。海亀ってうまれおちた場所に帰ってくるという遺伝子の記憶があるんですよ。そのウミガメの習性をてらして、海の向こうから帰ってきた中国人を 中国ではウミガメと敬意を込めて呼んでいることを、僕は2006年に、アメリカで、googleの本社で知ったんですよ。
アリババのジャック・マーさんや百度のロビン・リーさんのことを知って、『おおおおお、これやこれやがな』と。まさにライブドアショックで、堀江さんや熊谷さん、あるいは日広も含めてあらゆるネット系のスタートアップが日本中から、ある種、社会悪かのように総攻撃をくらいボコボコに叩かれてるときに彼らを知ったんですわ。
それで日本と外(主に東南アジア)を繋げて、日本に刺激を、ひいては雇用や経済がつくれる経営者を、スタートアップと一緒に取り組んでいきたいな、と思ってるので、日本に本社のある会社にも参画してきました。
商いになるか、ならないか
いま、何社に出資されていますか?
参画先は数えたら23社あるけど、参画した先の子会社や関連会社の役員も兼ねていたり。出資しているのは14社かな。うち半分ほどは取締役も兼ねています。
取締役として口出しするときの方針はいかがでしょうか?
口出し、というか、やっぱヒト・モノ・カネをチューニングしていくのが経営なので、そういうことの相談相手になってるなぁ。
加藤さんは、若い人に「起業したいんです。出資してください」としょっちゅう持ちかけられるとおもうんですけど。
「これはアカン」と思う若者の共通点というか、特徴はなんですか?
アカンのは、これからとりくむ会社の作業を通じて、誰にどんな便益を提供するのか、それがどんないい影響をつくるのか、良い世の中作りにどのように寄与するのか、イメージのない人、ね。
そのイメージのない若者は、それを聞かれたらどんな答えになっちゃうんでしょうか?
なんか、自分の作る価値をがーっと喋って終わり。商売って、提供する価値と対価の交換なので、それがないと、一度くらいはぼったくりで逃げられるけど、そのあと続かない。誰にどんな価値を提供して喜ばれたいのか、ってことやね。だからアカンのは、
1 儲けるつもりがそもそもない
2 儲けること自体に気が及んでいない
そういうのって、それを受け取る側に価値なしだから、残念ながら取引が成立しない。あるいは 一回限りで、あー時間とお金を無駄にしたな、って相手に思われて終了します。
そこなんですよ大事な話は。社会に便益を提供する=自分たちも儲ける、ということなんですね。玉置真理さんと「なぜ、あなたは商売に向かうのか」をじっくり話したことがあります。
その時彼女はこういいました「あなたも儲かる、私も儲かる、これやん?」と。
事業を企画する、会社を創る、ってことは、あたりまえに、なにかを売る、値段をつけて売るってことですが、相手がお金をはらった甲斐がないと成立しないんだよね。甲斐がない、すなわち対価をはらったひとの「儲け」がない。
なるほど「商い」はそこが大事なんですね。「自分の作る価値をがーっと喋っておわり」の若者は、そこに考えがいってないんですね。
「うまくいったら儲かるかも」の人はたいがい儲かってない。当初から企図する本人「うまくいかせて儲ける」つもりでないと周りもついてこれない。僕が参加する場合は、そこをしっかり話し合っています。