「仕入れ」が出会いを作る
これね、大事な話しますけどね。
さっさとしてください。
それが「モテる」ってことなんですよ。
???
いや、異性間の付き合いでも結婚でも、友人ができるのでも、それ以外の、「人と人がつながること」に共通するんですけど、なにかの「仕入れ」が、何年後か、何十年後かに他人と響き合ったときが「出会い」なんじゃないかと。
ある写真家との出会いを話しましょう。
彼は、この夏、還らぬ人になってしまったんですけど。
はい。
初めて出会った時、彼は私に心を開いてくれませんでした。彼にはある有名な俳優の肖像を撮ってもらったのですが、仕事の流れで、私は写真のプロである彼に「デジタルデータで撮影した画像を送ってくれ」と頼みました。
ふむふむ。
すると彼は
「デジタルデータ? そんなものは渡せません。それはただのデータです。それはあなたが今言ったように【画像】です。印画紙に焼いたもの、そして人の感情と記憶に残るように僕が精魂こめたもの、それが【写真】です。」
と言いました。
そこでわたしは、ぽろっと一言
「デッカード」
と言ったんです。
すると彼は
「デッカード!!! そうだよ!! デッカード!! あなたとはずっとこれから仕事をしよう」
と言って私の肩を抱いたのです。おっさん同士ですけど。
デッカードって「ブレードランナー」のですか?
はい。そうです編集長。
出典:amazon
リドリー・スコット監督の映画「ブレードランナー」の主人公、デッカードは(おそらく)、レプリカント(人造人間)という設定なんです。
映画「ブレードランナー」のお話は、前の対談でも仰ってましたね。
ハリソン・フォード演ずる主人公デッカードは、ニセの記憶、だが彼にとって愛しい記憶を植え付けられているんです。それは彼の部屋の古いピアノの上に、モノクロの、ぼろぼろになった家族の写真で表現されます。
出典:「ブレードランナー」
わたしは写真家の「印画紙に焼いたもの、そして人の感情と記憶に残るように精魂こめたもの、それが【写真】です」という言葉で、30年前に観た映画のワンシーンを思い出したんです。
鬼籍に入った写真家の名前は、宮本敬文といいます。その日以来、大切な友人でした。
出典:「ブレードランナー」
そんなことがあったんですね。それが、「仕入れ」が人間と人間をつなげる作用で、そしてそれは男女間に限らず「モテる」って現象で、魅力的な文章にもそれがあると。
だと思うんですよね。そんな奇跡でできてるんじゃないんですかね、人生は。