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アートディレクターとオリンピック【連載】広告代理店の現役アートディレクターが語る

中村征士 中村征士


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出典:「トーキョーショー」

佐野さんのエンブレム

アートディレクターとオリンピックといえばエンブレムの一連の問題が思い浮かびます。さんざんに揉めてようやく決まった案は、日本らしいといえば聞こえはいいですが、華やかさに少し欠ける使い勝手があまりよくないものに決まったな、という印象です。僕は佐野さんのデザインが良かったのではないかな、と思います。

それには、3つの理由があります。

1. オリンピックとパラリンピックのデザインが表裏一体になっていてスマートな答えを出している。これまでのオリパラのマークはオリンピックのものがメインでパラリンピックがサブ、というつくり方をしていた印象です。ところが佐野さんの案は同じ意匠を反転して新しいデザインの提案をしている。

2. 会場や印刷物のグラフィックに展開しやすい。幾何形体と強い色の組み合わせで構成されているので、どのような矩形のデザインにも適応しやすく、印象的なデザインをつくれる。大会全体を演出できるようなデザイン強度を持っているのがいいところです。

3. 誰でもマネできるほどのシンプルさ。子どもが学校でラクガキできるくらいの覚えやすさは拡散する上では重要です。これはのちにおでんでパロディができたりしてそれを証明しています。

 
確かにベルギーのシンボルマークとは似ています。でもパクる理由がないので偶然だったと思います。幾何学的な構成をすれば似ているものが偶然出てくるのは仕方のないことです。

ただ、サントリーのトートバッグのデザインではやってはいけないことをやっているのは明らかです。これは言い訳の余地がないくらいの盗用です。自分の抱えているデザイナーに対する教育とチェックが行き届いていなかったということでしょう。僕といっしょに仕事をしているデザイナーとも、「こんなことは流石にありえない、絶対にやってはいけないこと」と意見が一致しています。でもエンブレムのこととは切り分けるべきことです。トートバッグの件がなければエンブレムの問題はここまで大きくならなかったでしょう。

以上の理由で僕は佐野さんのデザインを支持します。何をいまさら、な感は否めません。でもあの世の中の盛り上がりの時にまともな意見が出ていなかったので書きました。

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