日めくりはまるで、壁掛け時計のように
松岡修造さんの数々の名(迷)言というものは、先ほども仰っていたように公式HPの動画やテレビなどで既に知られていましたよね。『松岡修造の人生を強く生きる83の言葉(アスコム、2011)』や『大丈夫!キミならできる!(河出書房新社、2012)』など、書籍も発刊されています。これらとは、どのように差別化を図られたのでしょうか。
他社様の書籍も公式HP動画に登場する言葉をもとに制作されているようですが、今回は「応援」というコンセプトを切り口に、過去10年分の動画から50程度の候補をピックアップし、さらに取材を通じて日頃から大切にされている言葉、その裏にある思いなどをお聞きし、“新作”も追加しました。
10年分もの動画から厳選されたとは。新作も、ファンには嬉しいですね。
差別化については書籍とは媒体が異なるため、正直あまり意識していませんでしたが、最初に書籍と動画の中間に位置する「日めくり」という媒体の特性・役割を考えました。
日めくりの特性・役割ですか? 具体的にどういうことでしょう。
書籍には数ページの解説が入るため、言葉の意味を詳しく説明できます。動画は、音声や動きによって強烈なインパクトを与えることができます。日めくりは、掲載できる要素が限られ、かつ、動画ほどのインパクトも期待できません。
そう聞くと、書籍にも動画にも劣ってしまうように思うのですが・・・。
一方で日めくりの特性は、内容がシンプルで、1ページ内ですべてが完結すること。また、壁に掛けられた時計のように日常の何気ない瞬間にふと目にするものであり、そうした瞬間に目に飛び込んでくる言葉はすっと心に入りやすいと思います。
時計のように、とは言いえて妙ですね。確かに何気なく目をやってしまいます。
日めくりの役割は、言葉を通じて視点を変えたり、あるいはほっと安心したり、忘れていた大切な気持ちを思い出したり、探していた答えを見つけたり・・・。出掛ける前に眺めればその日を明るく前向きにしてくれ、帰宅後に眺めれば明日を元気に生きるための活力となる。こうした日めくりならではの特性と役割そのものが、1つの差別化につながったと思います。
日めくりは、生活の一部分になりやすい媒体なのですね。
構成としては、読者の「心」に直接語りかけるような文体にすることで、短い解説でも言葉の意味がストレートに伝わるようにしました。特に、若い世代にも読んでいただきたかったため、解説はtwitter(144字)と同程度の150字前後でまとめ、小学校中学年程度でも理解できる平易な表現を心がけました。
日めくりといえば年配の方が会社のデスクや自宅のお手洗いに飾っている印象ですが、若い世代まで意識されていたとは。だからこそ、このようなベストセラーにつながったのかもしれません。また、あの何とも言えない写真もとりわけ若い世代に受けているようですね。
すべて撮り下ろしの写真は掲載する言葉と解説を確定した後に考えましたが、当初はカッコ良いポーズ、真面目なポーズを想定していました。
そうだったんですか! どうしてあんなにユニークな写真に変わったのでしょう。
撮影時に松岡様から「こうしたらどうかな?」といった提案を数多くいただいたのです。結果的に動画のインパクトに勝るとも劣らないユニークな紙面ができあがりました。
あの変顔や変ポーズ、松岡さん自ら提案されていたとは。
もう1つ、従来の日めくりにはなかった「日付のないスペシャルページ」を巻末に入れたことも、差別化につながったと思います。「今日は『噴水』になれないほど落ち込んでいる」といった日に、松岡様が全力の本気で応援してくれるページです。これも松岡様ご本人から提案をいただいて実現しました。
あのスペシャルページ、いいですよね。確かに意外性がありました。