「この表現と、この表現、まったく別の表現だけど考え方は同じかも」
つまり、無数のアウトプットの中に、ある共通項を見出したのです。例を出します。
1. 車を洗車しないあなたは、自分の体も洗わないんですよね?
2. 私はただ、人を好きになっただけなのに。(ベッキー)
この2つのコピーに共通するのは「他者に憑依した視点」です。1は車に、2はベッキーに。ただ「自分」という主観でモノを語るのではなく、客観に憑依し、主観にすることで新たな表現を生んでいるのです。
このように、一見「違うもの」に見える表現も、根っこは同じというモノが多くありました。そして、その「根っこ」を公式化できれば、別の変数(お題)でも適用可能だ。そう思ったのです。
「これだ!」
道が開けた私は、早速、公式づくりを開始しました。いくつもの表現を因数分解し、どのお題に対しても適用可能な公式を作っていきました。最終的にできた公式の数は30に及びました。
「新しいものとは、既存の要素の新しい組み合わせである」
これは、アイデアの本としてはあまりにも有名なジェームス W.ヤング『アイデアのつくり方』の一説ですが、私が見つけた事象を同じように言い換えると
「新しいものとは、既存の公式に新しいお題を当てはめたものである」
ということになります。
「公式」を見つけてから、私のクリエイター人生は大きく変わっていきました。まぐれ当たりも含め、いくつも広告賞を頂き、4年で独立を果たすこともできました。独立して9年。こうして今でもクリエイティブの仕事を続けられているのも、少しだけ「おもしろく解決できる人間」になれたのも、「公式」を生み出せたからだと思っています。