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もうすぐ年末、断捨離してみた【連載】松尾英里子のウラオモテ

松尾英里子 松尾英里子


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断捨離ブームである。

5年位前、初めて「だんしゃり」という言葉を聞いた時は、一体何の略語なのかしら、と思った。語感から、英語とかフランス語とかではないとは思っていたけれど、この間調べてみたら、ルーツはヨガの哲学にあるらしい。つこととてることを繰り返すうちに、邪心かられられるのだ、というようなことが書いてあった。なるほどね。さよならしたい邪心がいっぱいある私、これはトライするしかないな。

手始めに、衣類から。前に引っ越す時に、段ボール3箱分の衣類をリサイクルに出したのだけれど、それでもまだクローゼットはパンパン。物持ちがいいというかなんというか、大学時代に着たワンピースやパーカーまである。

就職活動で着たスーツもあった。うわあ。懐かしい。
アナウンサー試験となると、白やピンク、淡いブルーなんかのスーツに身を包んで受験している友人も多かった。あの頃は、お互い同じ夢を持つ仲間だけれども、数少ない内定者枠を争うライバルでもあるので、それぞれがどんな服装でセミナーや試験に来ていたか、しれっと注意深く観察していた、と思う。今でも、各局の同期たちが着ていたスーツの色を覚えている。

みんなみたいに、明るい色のスーツを着なくちゃ! と気合入れて色んなお店に行ったけれど、試着してみてもどうにも気恥ずかしく、私はついぞ、そういうパステル系スーツを買えなかった。結局、買ったのはツイードの茶系スーツ。色はちょっと、いや、周りに比べればだいぶ地味目だったけれど形が合っていて、背も人並み、超日本人体系な私のコンプレックスをまあまあ隠してくれた。エントリーシートに張る写真もそのスーツ姿で撮ったし、面接、筆記試験、カメラテスト、毎度毎度そのスーツで行った。そんな一着。着られるか着られないかといえば、着られる。でも、着るか着ないかといったら、もう着ない。よし、捨てよう。何事も、思い出だけあれば十分なのだ。

そんなスーツを「捨てる組」に入れたら、急に仕事が進んだ。もう何年も着ていない浴衣、旅行先で急に必要になって買ったジャケット、形は気に入っているけれど、色が褪せてしまったワンピース。たくさん持っている白ジャケットも(日テレに入社してからは、白スーツもパステルカラーも一切抵抗なくなったのです)本当のお気に入りだけ残した。一目ぼれした紺ワンピは悩んだけれど、もうしばらく着ていないから捨ててしまおう。ビニール袋はみるみるうちにいっぱいになる。衣類というのは、リサイクルやリユースしやすいものの一つだそうで、そんな思いが「いま私、ちょっともったいないことしてるかも」という後ろめたい気持ちをかき消してくれる。そうだ。この狭いクローゼットに、着ないまま放置されることのほうが、よっぽどもったいないんだ。

クローゼットだけで、90リットルのビニール袋が5つ。寄付したり、お店に売ったり、リサイクルの方法は色々あったけれど、手っ取り早く区のリサイクルセンターに持ち込んだ。あまりの量に、おじさんがびっくりしていた。私もこんなにあったのかとびっくりした。どうか、さよならした服たちに新しい命が吹き込まれますように。クローゼットは、急に風通しがよくなった。

ところで先日、息子の幼稚園の面接試験用に、紺色のスーツorワンピースが必要であることに気付いた。奇しくも断捨離直後。新しい物が増えるのを「断」っているところ。それなのに、ああ、それなのに! よりによって、あの捨ててしまった紺ワンピが必要になるなんて!

・・・前日まで買うか買わないか悩んだ私は覚悟を決め、翌日、手持ちの黒いワンピースに黒いジャケットを合わせ、面接に行った。志望している園は、制服もない、自由保育がウリの幼稚園。その校風に助けられてか、特に何も言われず(まあ、気付いたところで言いもしないだろうが)入園許可証をいただき、ホッと。これから後の断捨離には、勢いと、計画性を持って臨むとしよう。

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