• MV_1120x330
  • MV_1120x330

33歳、抱負を語る【連載】松尾英里子のウラオモテ

松尾英里子 松尾英里子


LoadingMY CLIP

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

先日、33歳になった。20歳になった時も30歳になった時も、特に何も思うことはなかったのに、なぜだか33歳は妙にずっしりきた

昔は、会うたびに人間ドックの結果の話をする大先輩や、やたら魚卵系にピリピリ反応する先輩を見ては「随分と健康に気を遣っているのだなあ」なんて思っていた。でも今はその気持ちがちょっと分かる。出産後、体質が変わることがあるとはよく聞くが、私も産後、骨折、気管支炎、蕁麻疹と、今まで無縁だったものたちと一気に距離を縮めてしまった。人生でこんなに病院に行ったことはない

VERYに出てくるような素敵ママに憧れてはみるけれど、「ナチュラルに見せるメイク」ではなく、「ナチュラルそのもの(=すっぴん)」で文字通り奮闘する毎日。子どもを寝かしつけながら、自分も寝てしまう、いわゆる「寝落ち」な毎日が続いている。部屋の片付け、メールの返信、仕事の連絡、明日の準備、やりたいことはたくさんあるのに、体がもたない。かといって日中は、子ども優先で過ごしているので、結局タスクは累積してゆくばかり・・・。困ったものだ。

33歳がなぜだか「重い」のは、身の重さに加え、やるべきことが自分のペースで回らないもどかしさの蓄積があるからなのかもしれない。
 

先日、ベビーカーに抱っこひも姿で、子どもたちと公園に向かっていると

「2人いると、毎日大変でしょう~」
と通りすがりの女性が声を掛けてくださった。その方も2人のお子さんを育てたそうで、今は84歳。

なんだか自分のエネルギーが吸われて、生き物として、枯れていっている気がします・・・
と答えると、

大丈夫よ~。私もそう思っていたけれど、子育てが一段落した時には、自分のエネルギーを向けるものがなくなっちゃって、むしろそれに困ったくらいだわ
と励ましてくださった。

女性は、右手に杖を持っているものの、背筋がシャンと伸びて、とても84歳には見えない。黒のパンツに、白いドットの入った黒いブラウス。首に巻かれたスカーフは、首の痛み用の貼り薬を隠すためだと笑っていたが、赤、紅、橙の花の模様がプリントされていて、素敵だった。3つの病気を抱えているそうだが、寒い日の陽だまりのような、何とも言えぬ暖かな雰囲気に包まれていた。

「お出掛けですか?」と尋ねると、銀座に絵の個展の準備に行くのだという。子育てが終わってから、どこか抜け殻のようになってしまって、ぼうっと過ごしていた毎日。なにか没頭できる楽しいことがしたいと、日本画を始めたのだそうだ。初めは自分ひとりの時間をつぶす趣味のつもりだったけれども、絵を通じた仲間ができ楽しくなって、もっと上手になりたいと書き続けているうちに個展まで開けるようになったとか。

よく、年の割に元気ね、って言われるの。たぶん絵を描いて、楽しく生きてきたからだわ。趣味を持つっていいわよ
とおっしゃっていた。響いた。

趣味を持つ。私は、これといった趣味がなく生きてきた。でも、たまに思う。もし時間を忘れるような趣味があったら、人生どんなふうになるのだろうと。あの女性のように、内側から滲み出る人生の余裕のようなものを、私もちょっと身に付けてみたいものだ。

33歳。今までの日々が重なっての、33歳。これから先へのステップとしての、33歳。今年は、とにかく健康第一で、そして意識的に趣味を探す一年にしよう。

街角のクリエイティブ ロゴ


  • このエントリーをはてなブックマークに追加

TOP