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「手料理」に隠された本音【連載】松尾英里子のウラオモテ

松尾英里子 松尾英里子


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先日、ママ友たちと「ママあるある」で盛り上がった。

●時間かけて作った料理に限って、子どもは食べない。

●家事と育児に追われて、一日中ノーメイク。それだけならまだいい、顔も洗っていなかったりする。

●子どもが寝そうな時に限って、夫が帰宅する。

●自分の分のごはんを、忙しすぎてキッチンに立ったまま食べたことがある。
(炊飯器から直接おしゃもじで食べたっていう人も!)

などなど、話し出したらネタが尽きない。軽く2、3時間話せるレベルだ。

そんな中、意外にも全会一致の共感を得たのが、

●誰かに手料理を作ってもらうのが、こんなに嬉しいとは思わなかった。

ということだった。

子どもが小さいと外食も中々行けない。行けたとしても、じっとしていない幼児と一緒では味わうまでの余裕がない。美しい盛り付けも一瞬見るだけで即、流し込む。「カレーは飲み物です」と誰かが言ったが、カレーだろうがパンケーキだろうが焼肉だろうが、母は、噛まない。さっさと胃袋を満たしてとっとと帰宅するため、ただひたすらに飲むのである。

でも、そんな食事では、さすがに胃も心も疲れてしまうので、基本、家ごはんになる。そうなると今度は自分が作るしかないので、毎度同じようなメニューに同じような味付けになってくる。ちなみに、つくね、そぼろごはん、カレーライス(甘口)、麻婆豆腐(これも当然甘口)が我が家の定番たち。作るのに時間が掛からない、もしくは作り置きできる。野菜を混ぜ込める。子どもが喜ぶ味付けである。柔らかくて食べやすい。そんなことを優先していると、大体こんな感じのごはんになってしまうという訳だ。あー、こんなことを書いていたら、激辛キムチ鍋が久々に食べたくなっちゃったよ・・・食べられないけど。(子ども用と大人用と2種類の献立を用意するようなキャパを、残念ながら私は持ち合わせていない)

それが、誰かに「手料理」を作ってもらえるとどうだろう。

家という、ある程度クローズで、周りへの迷惑もある程度限定される安心なスペースで食事ができる。

そして、いつも自分の作る料理とは違うものを食べられる。カレーにその家ごとの味があるように、たとえ同じ料理だって、自分が作るのと他の人が作るのとでは、何かしら違うものだ。しかもその料理を、買い物も調理の作業もなく頂ける。いくら料理を作るのが好きだと言っても、上げ膳据え膳状態ほど楽なものはないだろう。

それだけではない。私自身、毎日の食卓をはじめ誰かに料理を作る時、必ず食事を振舞う相手のことを考える。量や味付けは大丈夫だろうか。栄養バランスは取れているだろうか。トータルで満足してもらえる内容だろうか。いつも料理を作る立場だからこそ分かる、一皿一皿の手料理の裏側にある心遣いを、その時ばかりは逆の立場になって全身で頂けるわけだ。ただの「料理」ではない。「手料理」のずっしりとした重みを、胃袋に納める。

誰かに作ってもらう手料理・・・ゆったり。美味しい。楽ちん。そして、例えわずかでも自分のことを考え、料理を作ってもらえたことに嬉しくなり、大げさではなく心の底からありがたや~という気持ちになる。

大概、「あるある」ネタというのは、ある種の自虐を含んでいると思う。辛かったり悲しかったり悔しかったりするけれど、とりあえず笑っちゃおう、みたいな。つまりは、ひっくり返したり違う言葉で言い換えれば、本心が現れてくる。

その前提で冒頭の3つを言い換えると、以下の願望に代わる。

●時間をかけて料理を作ったのだから、子どもには残さず食べてほしい。

●毎日、ちゃんとした自分でありたい。せめて顔くらい洗いたい。

●ごはんは座って、落ち着いて食べたい。

そして、

●誰かに手料理を作ってもらうのが、こんなに嬉しいとは思わなかった。

「手料理」に含まれたやや複雑な感情を分解しつつ読み解くと、こんなふうになる。

●自分のために、自分のことをちょっとでも思いながら、自分ではいつも食べられないものを食べさせてもらえることが、こんなに嬉しいこととは思わなかった。

出てきた、本音。そう、ママたちは「自分のために」何かをしてもらうことに飢えているのだ。多分、手料理じゃなくたっていい。「肩、揉もうか?」でも「ゆっくりお風呂入っておいで」の一言でもいい。ちょっとした化粧品のプレゼントだって、「ママありがとう」という子どもの言葉だって嬉しい。「自分が大事にされてる感」が嬉しくてたまらなくなる。そう、これこそママの本音。なかなか口にはできない、ママの本音。ママだって、かまって欲しいのだ。

さあ、ここまで読んでくださったパパさん。今日は奥さんに、ちょっと優しい言葉をかけてみてはどうだろう。「何かやましいことでもあるの!?」と言われる人もいるかもしれないが、多くの人が喜ぶはず。

え? 我が家? 大丈夫、きっとこのコラムを読んでいると思うから。

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