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「ソニック・ザ・ムービー」は、不惑になれないアラフォー応援映画だ

金子ゆうき 金子ゆうき


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さあ、今回ご紹介する映画は「ソニック・ザ・ムービー」


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出典:映画.com

世界中で人気のゲームを実写化した作品。音速を超える青いハリネズミ・ソニックが爽快に駆けぬける親子で楽しめる最高の娯楽映画です。

あらためまして、街クリ映画ライターの金子ゆうきです。

いつもならダラダラ前置きするんですけど、ソニックはスピードがウリのキャラクターですから、映画評も急いでスタートしてみました。ソニックはせっかちな性格でして、ゲーム版ではしばらく操作せずに放置すると時計を気にする素振りでプレイヤーを急かしてくるんですよね。

さっそくいきましょう。

「ソニック・ザ・ムービー」ですが、公開前に主人公ソニックのCGが修正される事態になりました。予告編で公開された姿があまりにも原作のゲームと違うということで大炎上したからです。


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出典:IMDb 

これが最初に公開された姿。


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出典:IMDb

これが修正後。

うん、修正してくれてよかったよ。

修正前だったら映画評を書くどころか、営業再開後の映画館に足を運ぶようなこともなかったでしょう。

というわけで安心して見られるようになった「ソニック・ザ・ムービー」について、心おきなく書いていきたいと思います。

いつものごとくネタバレ仕様ですので、気になる方は鑑賞後にお読みください。

それでは、どうぞ。

セガファン感涙必至のロゴ演出

まず、この映画はオープニングだけで3000点です。はらたいらさんに3000点の倍率ドン! さらに倍!!

オープニングって、サンフランシスコのチェイスシーン? いやいや、その前。パラマウントの星マークがリングになっているのもニクいですが、その次。

『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』にはじまり『バーチャファイター』『スペースハリアーII』『ジェットセットラジオ』など往年のセガゲームが連なりセガのロゴをかたちづくる。そして、セガのサウンドロゴがオーケストラ編成で鳴り響く

もうね、スタンディングオベーションですよ。

ブラボー!! セガ最高!!!

とりみだしました……。セガのゲーム大好きなんですよ、僕。特にセガサターン。『バーチャファイター』『バーチャロン』が家でできるだけで大興奮だったし『デイトナUSA』『パンツァードラグーン』『ナイツ』も最高だったなあ。


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出典:Wikipedia 我が青春のセガサターン

なによりサターン版『タクティクスオウガ』はCV(キャラクターボイス)入り! プレステとは違うのだよプレステとは!!

分かってくれる人だけ分かってくれればいい。そして分かってくれた人と今すぐ抱きあいたい。

肝心のソニックはですね。プレイしたことはあります。ゲームギア版だったと思います。ゲームギアは生まれる時代を間違えた携帯型ゲーム機でして、ゲームボーイが弁当箱みたいだったころにカラー画面でしたからね。ゲームボーイとは違うのだよゲームボーイとは! さらに、テレビチューナーの付属品もあったんですよね。つくづく生まれるのが早すぎた……。

ゲームギアのすごさはさておき、ソニックをプレイしたことはあってもそこまで思い入れがあるわけじゃないというのが、本音です。ですから、ソニックというキャラクターの成りたちから調べてみましたので、そこから紹介していきます。

マリオに対抗するために生まれた、ソニック

ソニック誕生のきっかけは1990年4月。セガ社内で任天堂のマリオに対抗し100万本以上が見こめるゲームと、セガのマスコットとなるキャラクターづくりがスタートします。

ちなみにマリオは1981年の『ドンキーコング』で初登場。1985年発売のファミコンソフト『スーパーマリオブラザーズ』で世界的な人気キャラクターとなっていました。

1990年4月というのは、セガの16ビットゲーム機メガドライブ発売から約2年後、そして11月に任天堂の16ビットゲーム機スーパーファミコンの発売を控えた時期です。

大ヒットするソフトとキャラクターが求められる時期としても納得です。

キャラクターデザイナーの大島直人さん、ゲームデザイナーの安原広和さん、プログラマーの中裕司さんを中心としたチームでキャラクターづくりは進行。多数の案の中に、後にソニックとなるハリネズミのキャラクターも紛れていました。

大島さんはニューヨークを訪れ、候補の描かれたプラカードを持って、通行人にどの案がいいかを聞き出していったそうです。その結果、ハリネズミ(コードネームはミスター・ニードルマウス)が最も人気を集め、方向性が決定します。セガのロゴ色を採用した真っ青なハリネズミ。音速を超えるスピードで走るソニックが誕生することになるのです。

1991年にメガドライブのソフト『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の主人公としてデビュー。『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』は100万本どころか世界で400万本以上の大ヒットとなりました。その後も様々なゲームが発売され、販売本数はシリーズ累計9.2億本を超えています。


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iOS版『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』より筆者撮影のスマホ画面

9.2億本ですよ、9.2億本。無料ダウンロードの本数も含んでいますが、とんでもないです。ちなみに、マリオはシリーズ累計5.4億本。見方によってはマリオより実績のあるシリーズなんですよね。

お恥ずかしい話、そこまで人気だって知らなかったんです。でも、同じように思った人も多いはず。ソニックは日本以上に世界、特に欧米で人気だということなんだと思います。

「ソニック・ザ・ムービー」は2020年2月14日のアメリカ公開後、公開日からの3日間で興行収入5700万ドルを記録。これは2019年公開の「名探偵ピカチュウ」の5430万ドルを抜いて、ゲーム原作の映画における新記録となりました。世界での興行収入は1億ドル以上となり、製作費も回収できているようです。CG差しかえて良かったね、ホント……

原作ゲーム、キャラクターの人気があるとはいえ、映画として大切なのはもちろん中身。そろそろ中身について書いていきましょう。

バランスのとれた、優れたゲーム実写映画

この世には2つのゲームが存在します。実写映画にしやすいゲームと、しにくいゲームです。

たとえば「名探偵ピカチュウ」なんかは実写化しやすいゲームでしょう。「名探偵ピカチュウ」って『ポケットモンスター』シリーズの映画化に思えますが、違うんです。『名探偵ピカチュウ』というゲームがあり、それが原作なんです。映画同様に人間の言葉を話し、憎まれ口を叩くという設定。主人公の少年が相棒のピカチュウと共に失踪したお父さんとポケモン凶悪化事件の謎を追う大筋もゲームと映画で共通しています。

『バイオハザード』も、しやすい部類でしょう。リアルなアメリカで起こったという設定ですし、ゲーム自体がゾンビ映画からの影響も受けていますからね。

ソニックは、逆。映画化しにくいゲームだと思います。根本は、青いハリネズミが悪の博士を倒すために横に移動するだけです。キャラクターは現実世界でどのような存在で、どんな物語にするのかをイチから決める必要がある。「ソニック・ザ・ムービー」では「ソニックは遠い星に住むエイリアンで、自分の星にいられなくなって地球にやってきた」という設定になりました。

「E.T.」(1982)をイメージしてもらうと分かりやすいですね。ディズニーアニメ「リロ・アンド・スティッチ」(2003)も近い。

地球にやってきたエイリアンが巻き起こす騒動と、心の交流。「E.T.」から続くシンプルな構造と、分かりやすいストーリーラインが音速で駆け抜けるソニックのキャラクターと原作のゲーム性にマッチしていました。ひねりはないですけど、ソニックがひねくれたらダメですよね。

監督のジェフ・ファウラーは1978年生まれの41歳。13歳のころにメガドライブの『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』を散々プレイしていたと語っています。

ソニックは普通のティーンエイジャーみたいで「自分と同じだ、こういう子っている」とみんなが感じていた。そう感じてももらえるように、明るくて自信満々でヤンチャで、思わず好きになっちゃうあの性格はそのままにしたからね。
劇場パンフレットより引用

ジェフ・ファウラー監督にとって「ソニック・ザ・ムービー」が実写映画の初監督作です。2004年のCG短編アニメ「Gopher Broke」の監督・脚本を務め、アカデミー賞の短編アニメーション部門にノミネートされました。


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出典:IMDb

ちなみに「Gopher Broke」は主人公がホリネズミ。ホリネズミのアニメで注目された監督が、ハリネズミで実写映画でデビューというのは、おもしろい巡りあわせです。

「ソニック・ザ・ムービー」の製作をつとめ、監督も所属しているのがCGアニメーション制作会社のブラー・スタジオ。「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」(2015)のVFXや「マン・オブ・スティール」(2013)のエンディングタイトルなど映画のシークエンスや、ゲーム版『バットマン』シリーズのプロモーションビデオの制作をおこなっています。

出典:YouTube ブラースタジオが手掛けた『バットマン アーカム・ナイト』のプロモーションビデオ

映画とゲームの両面を知っている制作会社だからこそ、ゲームとバランスのとれた映画になったんでしょうね。じゃあ最初のCGはなおさら何だったんだってなりますけど。それはもう忘れましょう。

監督がリアルタイム世代ということもあってか、ゲームへのオマージュや、ファンサービスもバッチリです。この辺りは原作モノ映画では必須になってますよね。ここを怠ると大変です。

映画に散りばめられたオマージュポイントの一部をご紹介しましょう。

  • 映画の舞台となる架空の田舎町「グリーンヒルズ」。これはシリーズ第一作『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』のステージ「グリーンヒル」からとられています。

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    iOS版『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』より筆者撮影のスマホ画面

  • 映画本編の最後にかかっている音楽は、「グリーンヒル」ステージのBGM。
  • ソニックが大切にしている地図に書かれた星のひとつは「セガサターン」のロゴがモチーフ。
  • 「サンフランシスコは西だ」といわれて海まで行って戻ってくるのは、ソニックは泳げないという設定から。

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    出典:IMDb

  • ソニックがバーで食べるチリドッグは、ゲーム内でソニックの好物という設定。
  • サンフランシスコのビルから落ちるシーンでリングが飛びちるのは、ゲーム内でダメージを受けた時にリングが飛びちる演出のアレンジ。
  • 惑星マッシュルーム・プラネットへ飛ばされたあとのドクターロボトニックがゲームにおけるDr.エッグマンのビジュアルに。ゲームのDr.エッグマンも、もともとDr.ロボトニックと呼ばれていた。


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出典:IMDb

まだまだあると思いますがが、ざっとあげてもこんなところです。

最後にあげたドクターロボトニック。僕は彼が「ソニック・ザ・ムービー」における最重要人物だと思っています。演じたジム・キャリーのことも含めて詳しく書いていきましょう。

虚構と現実の境をなくしてしまうジム・キャリー(そして、山寺宏一)

「ソニック・ザ・ムービー」において、ソニックの存在は異端ですが、キャラクターは人間の少年そのもののようです。監督もそう語っていましたね。ゲームの架空のキャラクターが実在する気持ちよさです。虚構が現実に存在している感覚。

その真逆の存在が、悪役ドクター・ロボトニックです。ゲームに登場するキャラクターで、映画本編に大きくかかわるのはソニックとロボトニックだけです。

ロボトニックは人間の科学者ですが、その存在はきわめて異端。IQ300という頭脳とドローン。なにより尊大で滑稽な態度。現実の人間なのに、虚構のようなキャラクターです。


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出典:IMDb

虚構と現実の関係性。裏表で重なる真逆のキャラクターがいることで、観客がうまく映画の世界になじめたんだと思います。ロボトニックが現実的なキャラクターなら、より「E.T.」みたいになったでしょうね。

見事に演じたのは、ジム・キャリー。個人的には「マスク」(1995)です。アニメがそのまま現実になったような動きと演出。怪人・マスクになったジム・キャリーの現実離れした表情。ドクターロボトニックは25年以上前にワクワクした「マスク」の再来のようでした。


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出典:IMDb

ジム・キャリーが虚構と現実の境ををなくしてしまったといえば「マン・オン・ザ・ムーン」(2000)です。アンディ・カウフマンという実在のコメディアンの伝記映画で、ジム・キャリーがアンディ・カウフマンを演じています。


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出典:IMDb

アンディ・カウフマンは舞台以外でも役を演じているような人で、どこがジョーク(虚構)で、どこが現実なのかがまったく分からないんです。映画のつくりとしてもどんどん虚構と現実の区別がつかなくなってくる。そして、ラストで完全にその壁がなくなってしまうんですが、ぜひ見て体感してください。「ジョーカー」(2019)にも近い感じですね。

で、ジム・キャリーがいかにアンディ・カウフマンになりきっていたかわかる映画があります。Netflixオリジナルの「ジム&アンディ」(2017)です。


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出典:IMDb

「マン・オン・ザ・ムーン」の舞台裏を当時の映像とジム・キャリーのインタビューで振り返るドキュメンタリーなんですが、撮影以外でも完全になりきっているんですよ。ジム・キャリー自身も、アンディ・カウフマンになっていた自分を「彼」と別人格として扱っています。


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出典:IMDb インタビュー中のジム・キャリー。

どれくらいすごいかよくわかるエピソードがありました。撮影外でジム・キャリーアンディのお父さん役の俳優が口論するんですが、それをアンディの実の娘が見ていました。すると「お父さんがいるわ」と泣きだすんですよ。アンディ・カウフマンは、1984年に35歳で亡くなっていますから、娘さんにとっては早くに亡くした父がそこにいる感覚になったんでしょうね。

それほどになりきっていた。繰りかえしますが、撮影外ですからね。舞台外でもどぎついジョークを連発する人だから、監督はじめとしたスタッフはとても苦労したみたいですけど。「たのむから、映画をつくらせてくれ……」と監督がジム・キャリー(アンディ・カウフマン)に懇願しているシーンもあって、それはそれは大変そうでした。


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出典:IMDb

演じる人物のことを徹底的に調べてなりきる演技は「メソッド演技」と呼ばれています。別人格を自分に入れるので、心が壊れてしまうリスクもあるそうです。「ダークナイト」(2008)でジョーカーを演じたヒース・レジャーはよく知られていますね。

かなり脱線しましたが、虚構と現実をなくしてしまうジム・キャリーという人が演じたからこそ、ドクター・ロボトニックというキャラクターは成り立ったんでしょうね。監督もジム・キャリーがロボトニックの見た目や動き、口調に多くのアイデアを提供してくれたと語っています。

そしてジム・キャリーといえば忘れてならないのが吹き替えの山寺宏一さんです。僕を含め「マスク」をテレビで見ていた人にとってはジム・キャリーの声は山寺さんの声で再生されるでしょう。

やっぱり最高でした。最近の山寺さんのインタビューでびっくりしたものがあったので紹介します。

とても難しいんですが、収録時は英語の台詞を、音だけじゃなく波形(セリフのボリュームや尺感を表わすもの)までチェックしながら合わせて行きます。
『The Last of Us Part II』プレミアムインタビュー

波形ですよ! 波形! 山寺宏一さんのドキュメンタリー映画が見たいですよ。

吹き替えでいうと、ソニック役の中川大志さん。長年ソニックを演じてきた金丸淳一さんではないということでいろいろ言われたようですが、すごく良かったですよ。中川さんには、これから声優の仕事たくさん来るんじゃないですかね。

エイリアンもアラフォーも居場所をさがしてる

「ソニック・ザ・ムービー」においてソニックは、異星からきたエイリアン。「E.T.」や「リロ・アンド・スティッチ」に近いと書きました。しかし、この2作と決定的に違うのは、行動を共にする相棒。「E.T.」のエリオット、「リロ・アンド・スティッチ」のリロはいずれも少年少女です。

「ソニック・ザ・ムービー」は違います。ドーナツキング(パンフレットではドーナツ卿)と呼ばれていたトムです。トムの年齢は名言されませんが、おそらく40歳前後でしょう。

トムを演じたジェームズ・マースデンは1973年生まれの46歳。映画ではもう少し若い感じなので、アラフォー。ソニックは10代の少年くらいですから、親子ほど年の離れたコンビなんですよね。


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出典:IMDb

2人に共通していて、映画の根底にあるのが「居場所さがし」だと思うんです。ソニックは故郷の星を離れ、グリーンヒルズにやってくる。明るく無邪気に地球での暮らしを満喫しながらも、友達がいなくてひとりぼっちなことに寂しさと絶望すら抱いている。

トムはグリーンヒルズの警察官として人々に(動物にも)慕われて穏やかに暮らしている。それでも、もっと広い世界を、ここではないどこかを求めてサンフランシスコの警察を志望している。

トムのこの感じ、よく分かるんですよね。僕も38歳で、立派なアラフォー。仕事があって家族もいて、こうして映画評を書かせてもらえる。それでも時々、このままでいいのかなあなんて考えるわけです。これ以上何を求めるんだよ? なんて自嘲しながら。

子曰、
吾十有五而志于学
三十而立
四十而不惑
五十而知天命
六十而耳順
七十而従心所欲、不踰矩

孔子の『論語』の一節です。四十にして惑わず。そんな境地には立てそうもありません。惑いっぱなしの迷いっぱなし。

あらためて考えると、この映画アラフォーだらけなんですよ。監督のジェフ・ファウラーは41歳ジェームズ・マースデンは46歳US版でソニックを演じたベン・シュワルツは1981年生まれの38歳

ソニックも単なる少年ではない。故郷にいられないという現実に直面し、10年間もひとりきりで暮らしてきた悲哀を抱えている。

観客も、ソニックをリアルタイムで遊んできた同世代の人が多いんじゃないですかね。「E.T.」のように少年少女との交流という描き方もできたと思いますが、ソニックというキャラクターを考えると今回の設定でよかったと思います。

最終的にはソニックもトムも、グリーンヒルズに居場所を得ました。トムはサンフランシスコを選ばなかった。本当に大切なものは足元にある的な解釈もできますけど、何よりトムが心からグリーンヒルズに残ることを決めたことが重要だと思います。ソニックに出会わなければ、トムはサンフランシスコで後悔したかもしれません。

自分の選択したことを後悔しないこと。決定したことに惑わないこと。

それだって、立派な不惑じゃないでしょうか。

なってみて分かりますけど、アラフォーにだって選択肢や可能性はけっこう転がっています。迷うんですよ。何かを選んで、何かを捨てなきゃならない。その時、自分の選択を後悔しないこと。自信をもつこと。虚勢でもいいんです。40年も生きてれば虚勢を張る術くらい覚えますからね。

今、選んだものが未来を作ります。選んだものを後悔していたんじゃ土台ぐらぐらです。

ゲームに夢中だった10代を思い出させてくれて、アラフォーの今の自分を考えさせてくれる映画でした。単なるゲーム実写化のドタバタコメディではなかった。

背中を押してくれるでもない「決めたことに後悔すんなよ!」とソニックが喝を入れてくれるようでした。

興行的な成功をうけて続編の制作も決定しているそうです。ラストにでてきた「あのキャラクター」が物語にどう絡んでくるのか。今から楽しみです。

あ、そうそう。アラフォーが楽しむだけの映画じゃないことは最後にお伝えしておきます。

小学一年の息子と一緒に見たんですけど、次の週「あたらしい友達ができたんだ!」とうれしそうに教えてくれました。「ソニック・ザ・ムービー」の影響だなんて考えすぎかもしれないけれど、僕は惑わずそう決めつけました。

「そりゃよかった! 友達のしるしにハイタッチはしたのかい?」

とまで言ったらウザがられそうで、やめましたけどね。


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[イラスト]清澤春香

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