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「WALKING MAN」カリスマラッパーANARCHYが若者にエールを送る

はるちゃり! はるちゃり!


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2ヶ月ほど前のこと。
友人の店に食事に行った際、ラッパーと知り合った。

そして後日、こんなLINEがきた。


確か京都にチルなんちゃらってカフェがあったよね……

この人とは、会話が合わない。


いや……

よく分からないなりに頑張って返信したけど……

※デビューしません。

そして……

休、日、な、に、し、て、る、の?

これ……
デートのお誘い!?

そしてそのまま会話が続き、後日、映画「WALKING MAN」を見に行くことになった。

「WALKING MAN」とは、日本一のカリスマラッパーと言われているANARCHYが初監督を務める映画だ。

主人公のアトムは極貧の母子家庭で育ち、幼いころから吃音症でコミュ障、さらには事故で重症の母親を抱えてしまう。そんな彼がヒップホップと出会い、最底辺の生活から這い上がるべく奮闘し、成長を遂げる物語だ。アトムを演じるのは野村周平、アトムの妹・ウランに優希美青、アトムが思いを寄せるキムに伊藤ゆみ、嫌味なソーシャルワーカー柳下に星田英利が扮している。



出典:映画.com

映画にはT-Pablow、WILYWNKA、Leon Fanourakis、じょう、LETY、サイプレス上野、hMzといった豪華ラッパーたちも出演している。

と、いうことで今回は

普段はゆるふわ系の私もB-Girlバージョンでコラムをお届けしまーす\(^o^)/

ジャーーーン\(^o^)/


と、気合いは十分なのだが……。

本作は決してラップがメインの映画ではない。一人の青年が一人前の大人になっていく過程にフォーカスした青春物語だ。

ANARCHYはインタビューで次のように語る。

いわゆる「ヒップホップ映画」を作ろうという気持ちはなかったですね。もちろん、ヒップホップを武器にしているのは間違いない。でも、俺からしたらこれはヒューマンドラマであり、青春ムービーなんです。
引用:ANARCHY×野村周平が語る、ヒップホップを武器にした極貧青年の成長と青春

つまり、エセB-Girlの私が

出る幕は、ない。

(終わるの早っ)


川崎の工業地帯を舞台にした背景

本作はANARCHYの半自伝的な物語だと言われている。
ANARCHYは京都市伏見区にある巨大な市営住宅・向島団地の父子家庭で育った。自身も周りもみんな貧乏で、片親の子ばかり。そのような生活の中で、そこから抜け出したいとか、もっと明るくしていきたいと思うようになったという。
引用:映画『WALKING MAN』ラッパーANARCHY初監督×主演・野村周平、半自伝的な青春物語

自身の境遇から抜け出す手段にラップを選んだのは、お金がなくても始められるからだ。ラジカセひとつあれば、みんなでラップをすることができる。

その後、ANARCHYは逆境を糧にヒップホップでのし上がり、2014年にメジャーデビューを果たした。



出典:映画「WALKING MAN」公式HP

そんな彼の出身地である向島の要素を表現するべく選んだのが、川崎だ。

川崎は駅近くのにぎわいと少し離れた工業地帯のギャップが大きい。川崎駅東側の競馬場、競輪場、日雇い労働者向けの安い店が並ぶ下町周辺には、向島団地の困窮した暮らしと同じく貧困層の鬱憤を感じさせるものがあるという。

ちなみに、川崎は映画に出演しているT-Pablowの地元でもある。彼は昨今のラップブームの火付け役となったテレビ番組「高校生RAP選手権」(2012年)の第1回で優勝した。さらに2018年には、BAD HOPというヒップホップグループを率いて日本武道館でワンマンライブを開催するほどとなった。
T-Pablowは中学卒業後、進学ではなくアウトローの道を選んだのだが、彼もまたそこから抜け出す手段がラップだったという。

BAD HOPのメンバーは全員川崎区出身だ。彼らが成功したことで、川崎の子供たちが次々にラップを始め、同地はラップ・ミュージックの新しい聖地として盛り上がっていった。


参考:
日本のゲットーが生んだラッパーANARCHY、貧しさからの学び
自己責任論に切り込む青春映画『WALKING MAN』─脚本の梶原阿貴氏「今の世の中に問題提起したかった」
「ここは、地獄か?」川崎の不良社会と社会問題の中で生きる人々

貧困と自己責任論

脚本の梶原阿貴は次のように語る。

先が見えない中、ただひたすらANARCHYの考える「いい映画」を模索する日々が始まった。自分たちは言いたいことが言えるけど、この映画はそうじゃない人たちの為に作ろう。早い段階でそれだけは決めていた。
引用:映画「WALKING MAN」公式HP

主人公のアトムは家族の生活費や治療費、借金を1人で背負う。



出典:映画.com

そんな彼を、社会は「自己責任」だと言い冷たく突き放す。



出典:映画.com

貧困問題を語る上で、「自己責任論」は切っても切り離せない。

脚本の梶原阿貴は次のように語る。

アトムの両親はいわゆるロストジェネレーションです。就職氷河期で非正規雇用、労災もないし、保険も滞納中。これら全て彼らの責任でしょうか? 個人の生活は必ずその時の社会と連動していると思います。
社会問題を「自己責任」の名の元に切り捨ててしまっては、今は何の苦労もなく暮らしている人の生活も、いずれ何かのきっかけで崩れた時に誰も助けてくれないということになります。
引用:自己責任論に切り込む青春映画『WALKING MAN』─脚本の梶原阿貴氏「今の世の中に問題提起したかった」

日本では近年、政策動向に「自己責任」があり「自助」「共助」が強調され、社会保障費を削減する動きが強まっている。また、労働分野では規制緩和が進み、自由競争が強まっている。

日本の家族関係社会支出(各国が家族手当、出産・育児休業給付、保育・就学前教育、その他の現金・現物給付のために行った支出)はイギリス、フランス等の3分の1程度だ。

アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン、韓国、日本の7か国の中で、職場や自分自身に満足していない若者や憂鬱だと感じている若者が最も多いのが日本であり、自己の社会参加により社会を変えられると思う若者が最も少ないのも日本である。将来について「希望がある」と答えたのは、主な国が4~5割であるのに対し、日本の若者は約1割にすぎない。

引用:日本弁護士連合会「若者が未来に希望を抱くことができる社会の実現を求める決議」

「自己責任論」―“貧しいのは努力しなかった本人が悪い”という考え方は、特に高学歴・高収入の人ほど強いという。それは、自身の成功を「自分の地位や財産は自分で築いたものだ」と考えると、必然的に「貧しいのは本人の責任だ」ということになるからだ。このような傾向は2000年代に強まったという。
参考:貧しいのは本人のせい?エリートに広がる「自己責任論」、越えるには

ただし、貧困と自己責任論についてANARCHYは次のように語る。

「ゲットー(貧困地区)」というのは地域だけじゃなく、「心のゲットー」もあると俺は思ってます。川崎が貧乏な街だからゲットーかと言えばそうでもなくて、渋谷だってゲットーなんじゃないか。自己責任論ではないけど、全部を環境のせいにしてしまう「心の中のゲットー」がいろんなところに溢れてるんです。
でもそれは悪いループにハマっちゃってるだけかもしれない。たしかに環境には恵まれていないにしても、自分でその気になって一歩踏み出せば、そこから抜け出したり夢を掴めたりするチャンスは、どんなところにでも、誰にでもある。川崎の貧困家庭を舞台にした背景には、そんな想いがあります。

引用:ANARCHY×野村周平が語る、ヒップホップを武器にした極貧青年の成長と青春

自分の不幸を全て環境のせいにして、人生を諦めてしまうのは違う。
社会に対する疑問や怒りは確かに根底にあり作品中で表現されているのだが、日本社会の欠陥を訴えつつも、若者が未来に希望を抱けるように「マイナスな環境だってプラスに変えることができる」「人生は自分で切り開くことができる」という熱いエールを送っている点が、本作のバランスの良さである。

人生を変えるために必要なこと

本作は、例えばラッパーEminemの半自伝的な映画「8 Mile」のような成功物語ではなく、内気な青年が様々なきっかけを通してラッパーへの夢を抱くまでにスポットライトを当てた物語だ。

タイトルである「WALKING MAN」は、「ウォークマン」と「ウォーキングマン」のダブルネーミングとなっている。



出典:映画.com

人は誰しも、何かに出会う。そのきっかけはどこにでもある。
だから、何か一つでも好きなことを見つけて、一歩踏み出してほしい。
夢や憧れの気持ちを大切にして、人生を自分の足で歩んでほしい。
そのような想いが込められた作品なのだ。

ANARCHYは次のように語る。

この映画を通して若者達が一歩踏み出す勇気が持てる映画にしたいです。
多くの人達が心にしまっている言葉「ありがとう」「愛してる」を口から出して伝えたくなるような作品になると思っています。

引用:映画『WALKING MAN』ラッパーANARCHY初監督×主演・野村周平、半自伝的な青春物語

人生を変えることは、“素直”になることから始まる。
この映画を通して、今まで心の奥底にしまい込んでいた本当の気持ちを認めてあげることができたなら、きっと周囲に対しても温かく、優しい気持ちになれるだろう。

私はこの映画を観終わったあと、自分の心が少し軽くなったような気がした。そして無性に、何かに挑戦したくなった。
それは昔、自分が何かに憧れを抱いた時や、行動を起こすと決めた時の胸の高鳴りを思い出し、懐かしくなったからだろう。

番外編:不採用となったB-Girl企画

今回、私はそれまでの人生で全く縁のなかったラップに興味を持つようになった。
そして、私も勇気を出して一歩踏み出そう!と思い、例の“コミュ障”ラッパーに私をB-Girl風にしてくれるよう頼んだ。
普段はゆる〜いニットにふわふわスカートの私。初めての古着屋さん巡り!

衣装を揃えて……


いざ撮影!

実際はこの5倍以上撮ったんだけど……

結局使い道なかったよね……

ガーーーン!



(一日中付き合わせてごめん!)

この日は服選びからはじまり、私の超無計画な撮影に振り回してしまったため、夜、お礼のLINEを送った。

スコスコ……

結論。

勇気を出して一歩踏み出すこと

新たな恋に出会うチャンス、かもしれない!!!


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[イラスト]ダニエル

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