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「サウナのあるところ」を見るために初めてサウナに入った話

みる兄さん みる兄さん


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最近、サウナが盛況を見せている。

サウナのコラム、サウナの漫画、サウナのドラマ、サウナのSNS投稿など、ほぼ毎日サウナの情報にさらされている。

僕はというと、小学生のころにその熱さと湿気に驚き、飛び出て以来、一度も入ったことが無い。

・サウナはびちょびちょ
・サウナは暑苦しい
・サウナは苦行

これが数週間前までのサウナの印象だった。

そんな折、映画「サウナのあるところ」が9月に公開されることを知った。このタイミングを逃すと、一生サウナに入ることは無いと一念発起して、コラムのための取材を言い訳にして入り、そして映画コラムを書くことにした。

■ 映画「サウナのあるところ」について
この作品はフィンランド人のヨーナス・バリヘル、ミカ・ホタカイネンの2人が監督したサウナドキュメンタリーだ。フィンランドでの公開は2010年。当時は日本未公開であったが、昨今のサウナの盛り上がりによって日本でも公開されたようだ。

そもそも、なぜサウナの映画がフィンランドで生まれたかというと、フィンランドはサウナ発祥の地と呼ばれており、世界で1000万か所あるサウナのうち、人口550万人のフィンランドに300万か所も存在している。数もさることながらテントや車の中、電話ボックスなど物珍しいサウナがあるのが特徴だ



(出典:IMDb



出典:uplink

物語は、フィンランド人男性のモノローグが永遠に続く作品だった。特に山場は無い。



(出典:映画.com

僕は意外とこのモノローグ的な作品が好きだった。この作品の雰囲気は、NHKの「ドキュメント72時間」に近いかもしれない。この番組も起伏があるわけでは無く、日常と、行き交う人々たちのモノローグが続く作品だ。そこに特別なドラマは無いが、日常の一つのシーンをそのまま切り抜いた描き方をしている。

劇中で出てくる話は、愛する妻と子供の生活の話。離婚して離れ離れになってしまった娘の話、アル中で服役していたが妻と出会って幸せをつかんだ話、鉄道の事故を助けられなかった話、クリスマスの親子への愚痴の話、双子の娘をなくしてしまった話、モノを沢山こわす愛すべき子供の話、それぞれのエピソードは独立しているが、妻がいて子供がいて、それなりに大人になった僕には友人の話を聞いているようで、胸が痛かった。

見る人によっては、なぜこの監督は裸の男たちの淡々とした独白を撮りたかったのか? と疑問に思ってしまうかもしれないが、サウナの歴史について調べて、サウナを体感した後の僕には、監督が表現したかった意図がなんとなく感じられる。

サウナは自分の気持ちを内省して話したくなる場である。居酒屋で話すのとは全く違う。あの熱気と密封された空間だと話すペースはゆっくりと、そして普段より深い話をしたくなる。これは、新たな発見だった。

サウナは、まるで教会の前での告白のように、男たちにとって、踏み込んだ話ができる日常の“待避所”だということを、フィンランド人の監督は人々に伝えたかったのだと思う。

また、サウナという非日常的空間で日常を撮影することは、地味に見えるがかなりのチャレンジだったようだ。

ひとつのエピソードを撮るのに、サウナ室内だけで4時間かかったのですが、16mmカメラは10分30秒毎にフィルム交換が必要です。ただ、撮影対象になってくれた人たちも、ずっと中にいられるわけではなく、彼らがクールダウン休憩のために外に出るのと、アシスタントがフィルム交換するタイミングが絶妙に噛み合ったので、ありのままの会話や光景を撮ることができました。(出典:webdice)

■ サウナの起源と歴史
フィンランドサウナの起源は約1万年前の石器時代にさかのぼる。

当時は、まず、地面に穴を掘って石を敷き詰め、その穴の中で丸太を焼き、石を熱する。ポプラや柳の木の枝々でその周囲を骨組を組み、その上に動物の皮をかけて地面に簡易的なテントを作る。サウナに入る人は衣服を脱いで水桶を持ち、動物の皮の下をくぐり、穴地に入って発汗する。これが最古のサウナと言われている。

その後、サウナがフィンランドを飛び出して、世界に広がったきっかけは、1936年に開催されたベルリン五輪だった。ベルリン五輪の選手村にフィンランド選手団がサウナを持ち込み、気持ち良さそうにしているフィンランドの選手たちの様子をみて、世界中から集まったアスリートたちが、自分の国に取り入れたことで一気に世界に広がった。

日本でサウナが出来たきっかけは、1956年のメルボルン五輪の選手村に設置していたサウナ施設にクレー射撃の許斐氏利選手が感動し、自身が経営していた銀座の入浴レジャー施設「東京温泉」に日本で最初のサウナ施設を作ったのが原点と言われている。

そんなサウナの歴史を知った後に入るサウナとサウナ映画は格別だった。なんせ、フィンランド人は世界で最も幸福度が高い国とされている。要因を様々な角度から分析されているが、人に対する信頼感がとても強いことも一因らしい。日本でも「裸の付き合い」という慣用句があるが、フィンランドの人々は「裸の付き合い」が生活の身近にあり、人と人との関係性が良いバランスなのだと思う。

せっかくだから初心者なりにサウナの入り方をまとめてみた。

1⃣ まず、サウナ好きの人を探す
これが全てと言っても過言ではない。大人になって初めてサウナに入るときの緊張感は半端なかった。銀座の寿司屋に1人で入るくらいハードルが高かった。(行ったことないけど)。どんなに事前に調べていても、1人で入っていたら確実に右往左往して、リラックスできなかった。

映画「サウナのあるところ」のように、少し込み入った話をする場所としては良い空間なので、ベテランサウナ―さんと2人で行くのが良い。
サウナ室はそこまで大きくないので、ワイワイするのは控えなければならない。

2⃣ 水風呂が広めの場所選ぶ
サウナの入り方を調べていて、僕が一番びっくりしたのが、サウナと水風呂が切っても切れないセットだということ。

ベテランサウナ―に聞くと、水風呂への導線が大事で、なるべく近くにあること。そして、サウナと水風呂の人数バランスが重要らしい。サウナ8名/水風呂1名などバランスが悪い場所に行ってしまうと水風呂渋滞になってしまう。サウナの人数:水風呂の人数が3:1くらいのバランスを目安にすると良い。

さらに、外気浴(露天的な場所での椅子ゾーン)があるかないかも事前に確認しておきたい。ベテランサウナーさんたちとの会話で出てくる「ととのう」を体験する近道は、この外気浴の環境に依存するといっても過言ではない。

3⃣ 入る前の準備・その1
入る前にコップ一杯程度の水分を補給しておくと良い。風呂場では体と髪を洗い、湯船で少しあったまる。サウナに入ると汗をかくので、清潔な状態で入ることはマナーだ。事前に少し温まっておくと汗が出やすくなる。

4⃣ 入る前の準備・その2
タオルで体の水滴をしっかり拭く。水分が体についていない方が発汗作用が強く、サウナを存分に体験することができる。

湿度や温度は最適なセッティングで管理されており、そこに水分たっぷりな人が入ってくるとセッティングが壊れてしまう。

5⃣ サウナに入っているベストな時間
大抵のサウナにはサウナタイマーか砂時計がある。ベテランサウナ―さんに聞くと、サウナタイマーは12分。砂時計は5分の設定だ(砂時計はたまに3分もあるらしい)。

初心者はまず、5分をひとつの区切りとするのが良いと聞く。汗が出ていない場合は、7分~10分までは入っても問題ないそうだが、初心者で10分を超えると2セット目にだるさが残ってしまう。体感的には、じんわりと汗が出てきて鼻の頭からぽとっと汗が落ちそうな状態が良い感じだった。

余談だが……サウナタイマーが、なぜ12分計なのか? 最初に入った時に気になっていたので調べてみた。サウナタイマーを作っている社長インタビューによると、パーツを通常の時計から流用していること。盤面デザイン的に12分割に馴染みがあること。1回のサウナ入浴時間がおよそ12分前後であること。など複数の理由が要因で12分計になっている。

6⃣ 水風呂タイム
5分から10分間サウナに入ってしっかり汗をかき、かけ湯かシャワーで汗を落としたあとに浸かる。

水風呂に入る時のコツは一度腰まで浸かった状態から、その後一気に肩まで浸ること。肩まで浸かったら、微動だにしないこと。

この入り方をすると、ベテランサウナーさんたちが言う、体と水との間に生まれるオーラのような「はごろも」を感じることができる。この「はごろも」の感覚は異次元だ。キンキンに冷えてるはずが、なぜか抱きしめられたような人肌の温もりを感じる。じわじわと、頭が冴える感覚がうまれてくる。この感覚は是非とも体験するべき。

7⃣ サウナ→水風呂→そのあとは?
水風呂に1分ほど浸かって出たら、露天が有れば外気浴をして休憩する。スーパー銭湯に白いプラスチックの椅子やベンチがある理由を「湯船でのぼせた人のセーフフティゾーン」と思っていたが、外気浴が楽しみ方のラストピースだった。

8⃣ 「ととのう」を体験するために
身体を洗って湯船で温まった後、水滴を拭く→サウナに入る(5分〜10分)→シャワーで汗を落とす→水風呂に入る(1分)→外気浴する(3分)。を繰り返していくと、だんだん不思議な感覚に襲われる。

それが、「ととのう」だ。

僕の話をすると、映画「サウナのあるところ」の鑑賞前に、ベテランサウナ―さんと2人で渋谷の改良湯にてサウナデビュー戦をしてきた。



(出典:www.is.fi

サウナは1人で入るのも良いが、この作品のように自分を内省しつつ、静かに友人と語らうのも良い。

サウナに入って、「ととのった」後、映画をみるのは大人の楽しみだ。
その映画の作品自体を深掘りしながら楽しむのが映画鑑賞の楽しみ方の王道だが、映画のテーマに関する、知識や体験を楽しむのも良いことをこの映画で教えてもらった。



(出典:uplink

現にこの映画をきっかけに、僕の生活は「サウナのあるところ」になってしまった。

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[イラスト]ダニエル

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